【積水化学グループ】入浴介助の負担軽減と高齢入居者の自立支援へ~モノをヒトに合わせる可変性~


「日本は超高齢社会となり、介護業界も課題が山積み状態です。少子高齢化に伴う需要増大と深刻化する介護人材不足、利用者の高齢化に伴う重度化や体格アップによる設備問題。私たちは高齢社会、そしてそれを支える介護業界で挑戦を続けています」


ウェルス事業のリーダー山岸裕司


積水ホームテクノの執行役員 事業統括部長兼事業統括部 ウェルスBU長の山岸裕司は話す。同社は新大阪駅直結のオフィスビルに本社を構えている。受付を入ってすぐ、浴室のショールームがあり、そこで話を聞いた。傍らには同社開発部開発企画グループ長の守谷淳と、同社経営企画部販売企画グループで介護経営コンサルタントの佐藤慎也がいる。


「私たちウェルス事業では介護用浴室を提供しています。介護業界の中で、特に入浴介助の負担軽減と介護人材不足の課題を解決しています」


介護業界の問題は、他人事ではない。親の介護や自身の老後に、安心して心健やかに過ごすには、この分野の課題解決は急務である。

約800万人の団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」

2025年問題――。

これは約800万人の団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年のことを指す。来年、日本は国民の4人に1人が後期高齢者という超高齢社会を迎える。社会保障の担い手である労働人口は減少し、社会保障費の増大や財源の不足が予想されている。少ない人手でこの社会を支えていくためには、生産性向上が求められてくる。


「介護業界の人材不足の原因の一つは、介護職員の介助負担が大きく、離職率に影響を与えていることです」


経営企画部販売企画グループ 介護経営コンサルタントの佐藤慎也


介護経営コンサルタントを務める佐藤はそう話す。介護業界は全国的に離職率が高く、2022年度は国内で初めて辞めた人の数が働き始めた人の数を上回った。


「介護職員は利用者の入浴、移乗、排せつなどの身体介助により重い身体的負担を感じます。また、命を預かっているわけですから、利用者とのコミュニケーションやケア業務における精神的負担も非常に大きい。施設側にとって、介護職員の負担軽減を図るなど労働環境を改善していくことは喫緊の課題です。ウェルスの介護用浴室はその解決策の一つ」


積水ホームテクノでウェルスのプロジェクトは2010年から始まった。山岸が当時を振り返る。


「もともと私たちはユニットバスの設計から開発、施工、アフターメンテナンスを行っています。そこに2007年、介護用浴室が積水化学から事業移管されてきました。積水化学では1986年から高齢者住宅施設用の設備研究所を立ち上げ、設備品はこうであるべきと考え続けてきた背景があります。当初は住宅の中で考えていたのですが、2000年に介護保険法がスタートし、介護施設に対しても浴室としてベストな商品を出していく流れになりました」


当時は介護施設というよりは介護サービスとしての「お風呂」を考えており、家庭的なサービスの延長線上で展開していた。


「ただ、介護施設の利用者も月日と共に年齢が上がります。加齢に伴う身体変化で自立入浴が難しくなってくることも。何もしないと介助負担は増していくため、『可変性』というコンセプトを基にウェルスを生み出したのです」


積水化学は加齢配慮(エイジレス)という言葉を生み出し、バリアフリーという言葉もなかった時代に段差問題を解決するユニットバスの開発もしていた。その延長線上にあるのがウェルスで、それまでユニットバスを提供してきた積水ホームテクノがウェルス事業を担うことになったわけだ。

「ヒトがモノに合わせる」のではなく「モノがヒトに合わせる」

ウェルスは将来の変化を見通し、フレキシブルに対応できる多彩な設備や機器・サポートシステムを用意しており、すでに1万施設以上で導入されている。


「ウェルスの特徴は大きく三つあります。一つは『ヒトがモノに合わせる』のではなく『モノがヒトに合わせる』という発想から生まれた可変性。もう一つは、一つの浴室で自立から重度者対応まで可能なユーザビリティーです。そしてこれを実現できている理由が、介護だけでなく施設設計・設備にも精通している当社独自のノウハウです」


介護業界における機械浴のメーカーもある。ユニットバスのメーカーもある。しかし、その二つを併せ持つ会社は当社だけではないかと山岸は話す。強みはどこにあるのだろうか。


「実際にご覧になったほうがいいでしょう」


私たちは積水ホームテクノにあるショールームでユニットバスを見せてもらうことにした。まず中央にある浴槽が簡単に左右に動くようになっている。開発の守谷が解説する。


「自立入浴できる方は中央のままでもいいのですが、介助が必要な場合、介護職員が介助を行うための広いスペースが要ります。そのスペースを広げるために浴槽そのものをずらし、広いスペースを確保できるようにしています」


開発企画グループ長の守谷淳



中央にあった浴槽を左に寄せて左にあった移乗台を右に移動させればフラットな状態になる。台をどかせば広いスペースが生まれるので、介護職員が中に入り介助することも可能だ。


さらに、浴室に配置された手すりと連動することで別の効果ももたらすという。


「手すりも自由に場所を変えられるので、例えば左半身が不自由な方は、右側からお風呂に入っていきたい。その場合は右側に浴室を移動させ壁と直結、手すりも右側から入りやすいように配置すれば自立入浴も可能となります。右半身が不自由であれば逆のデザインにし直せばいいのです」


手すりも利用者の状況に応じて配置し、ロックできる


手すりは配置だけでなく距離なども調整できる。


「身体の大きい方と小柄な方では手を伸ばせる領域にも当然違いがあります。その人が手を伸ばせる範囲に手すりを簡単に配置できるようになっています」


山岸が話していた「『ヒトがモノに合わせる』のではなく『モノがヒトに合わせる』」とはまさにこのことだろう。状態に合わせて浴室が変われば、一人でできることも増えてくる。入浴は自分一人でできるなら自分でしたいとは誰もが思うだろう。しかし、自分の身体状態が変化する中で、入浴がままならなくなることもある。ウェルスであれば、その時の状態に合わせて変化させられる。自分一人でできる期間が長くなるということは、自立支援にもつながるというわけだ。

入浴リフトを追加すれば洗体から入浴まで乗り換え不要

積水ホームテクノはユニットバスの取り組みから、新たに一歩踏み出し、入浴リフトの開発も行った。同商品は経済産業省のロボット介護機器開発・導入促進事業で開発されたもので、入浴介助および移乗介助の負担を軽減し、より安全・安心な入浴サービスの提供を目指している。


「入浴リフトはご覧の通りチェアのようになっていて、そのまま洗体が可能です。その後入浴リフトを浴槽にスライドしセットし、昇降スイッチで座面を下降させ入浴、という流れです」


山岸らが実際に操作をして実演してくれたが、これなら介護職員が洗体後に利用者を浴槽へ入れるための抱え上げによる身体的負担はないだろう。


リフトを浴槽と合体させ、スライドさせると簡単にチェア部は浴槽の上にくる


昇降スイッチを押せばチェア部はそのままゆっくりと浴槽の中に入っていく


「入浴介助で介護職員が2人がかりということはよくあります。介護人材が不足している中で、マンパワー不足をどう解消していくか? その一つの打ち手がこの入浴リフトです」


入浴は利用者の多くに「喜び」を与える。大変だからといって避けるわけにもいかない。そうであれば、入浴リフトのような介護ロボットを用いて喜びを提供していきたい。積水ホームテクノはそう考え同製品を開発した。


そして今では介護職員らが「これがないなら辞める」という声をあげるほど、利便性の高い存在になっているという。濡れた状態で抱え上げることは利用者の危険も伴い、介護職員の精神的負担が大きいのだ。


介護施設の浴室にはリフトの後付けを考えていない設計も多い。そのため仮にリフトを設置するとリフト専用の浴室になってしまう。10人の利用者のうちリフト利用者が一人だったとすると、その一人のために他の人は浴室が使えなくなってしまうのだ。ウェルスの浴室なら、入浴リフトを移動させることで、浴室利用者それぞれの状態に応じて対応が可能だ。

試行錯誤の連続、それでも社会課題解決のために挑戦を続けていく

「ウェルスシリーズは今でこそ多くの方にご利用されていますが、私たちにとっても初めての取り組みだったので当初は試行錯誤の連続でした」と山岸は話す。


ウェルス事業立ち上げ当初、介護事業者とのつながりは全くなかった。事業者のリストをつくり、山岸自ら飛び込み営業をして回ったという。


「介護浴室について、誰に提案をしていいのかも分からない。また、そもそも介護施設にメーカーが直接営業に来ることも珍しかったみたいで苦労はしました。なんとか商談にもっていっても、高いと言われてしまったり。超えなきゃいけないハードルは無数にありました」


それでも、と山岸は続ける。


「介護業界の中でも入浴介助が重労働にあたることはある程度は分かっていましたし、この商品が介護職員の方々の悩みを解決できる自負がありました。めげずに提案を続けて、採用していただく施設が増えていきました」


ウェルスの特長はその可変性とそれに伴う持続性だ。ウェルスの商品は古いバージョンのものでも、例えば最新のウェルスリフトキャリーを設置できる。初期コストは高いが、ランニングコストを考えた時に割安であることが伝わると導入は進んでいったという。


「開発もこれまでのプロダクトとどうつないでいくかというのが課題になります。商品も増えてきていますから、今後ますます大変になってくるとは思うのですが、介護施設の経営者の方々にとっても、浴室は頻繁に変えられるようなものではありません。一度入れてもらった以上は、そのままで新しい商品が利用できるような形にしていきたい」


山岸はウェルス事業に携わるにあたり、最初に介護施設の実態を知るために実務を体験したそうだ。


「入浴介助のお手伝いもしていましたが、大変なのがフロアの移動です。各フロアに浴室があっても、重度利用者用の特浴室は1階にしかない場合もある。その場合、エレベーター渋滞が起きて入浴時間の管理工数が増大します。介護職員も利用者も同じフロアの移動、つまり水平移動が比較的楽だということも分かり、同じフロアで入浴介助を行ってもらいたい想いでこの商品が誕生しました」


自身が体験し、その経験をベースに商品を生み出す。この寄り添い方は徹底していて、介護施設・介護職員向けに無償のEラーニングサービスも提供しているという。担当の佐藤が話す。


「2014年からウェルス導入事業者さま向けに提供していて今130本くらいのコンテンツがあります。法定研修などのメニューもあります。始めた理由ですか? 介護職員の皆さんはとにかくお忙しい。同じ月に複数回、研修日時を設定しても、どうしても参加できないことがあります。Eラーニングであればご自身の都合のよい時間帯で学べるので、研修負担を軽減できると考えているからです」


それにと、佐藤は続けた。


「ウェルスの事業を核として介護のコミュニティーが作れたらと思っています。私たちはメーカーですが、売って終わりというわけではない。現場の方々と共にこの社会課題の解決に向き合っていくという気持ちです」


国もバイタルデータ活用などで最適な介護を目指す科学的介護や介護ロボット導入支援も行ってきている。しかし、現場では人手不足もあり、学べる時間も少ないという。そのために、コミュニティーを通じて国の取り組みなどを伝えていくことも使命だと話す。


山岸も「社会環境が変化していく中で、日本でも自立支援に注目が集まっていますよね。高齢になっても自分らしく生活するために、身体的、精神的な支援をしていく。このことも、ウェルスは重視していて、手すりの可変性などはまさにそこにこだわりをもって作っています。自分でできるうちは、自分でやる。そのための支援としてウェルスがある。こうした環境が整えば国の介護保険、社会保険の抑制にも寄与できるのではないでしょうか。そしてそれができるのは加齢配慮という言葉を生み出し、早くからこの事業を立ち上げ、課題に取り組んできた諸先輩方への感謝の念と意志を引き継ぐ私たちだけです」


2025年問題をはじめとし、日本の超高齢社会における課題は山積み状態だ。その課題に対して「モノがヒトに合わせる」視点で介護施設における生産性向上、そして利用者を含めた人々の自立支援に貢献するために山岸たちのチャレンジは続いていく。



【関連リンク】

ウェルス(wells)ウェブサイト

https://wells.sekisui-hometechno.com/


【SEKISUI|Connect with】

https://www.sekisui.co.jp/connect/

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