治療・予防

認知症高齢者の運転
操作する機能が衰え事故につながる

 高齢運転者が起こす交通事故が増えている。2017年に改正された道路交通法では、75歳以上の人が免許更新時に受ける認知機能検査で「認知症の恐れあり」と判定された場合、医師の診断を受けることが義務付けられた。認知症に詳しい順天堂大学医学部付属順天堂医院(東京都文京区)メンタルクリニックの新井平伊主任教授は「認知機能の低下が疑われる高齢運転者には、家族の思いを伝えて自主返納を勧めることが重要です」と話す。

認知機能の低下を自覚したら、免許の自主返納を考えたい

 ▽認知機能の低下を自覚

 警視庁の調査によると、65歳以上の運転者が起こす交通事故の割合は年々上昇しており、その4割近くは安全不確認が原因だ。死亡事故を起こした75歳以上の運転者の7%に認知症の恐れがあり、42%に認知機能低下の恐れがあるという。

 加齢に伴って認知機能が低下してくると、最初に、家電の操作が苦手になるなど、日常の生活動作に症状が表れる。車の運転にも影響し、障害物にぶつけたり、車庫入れに失敗したりする。「こうした変化に気付くのは本人であり、主観的認知機能低下(SCD)として最近注目されています」と新井主任教授。周囲が、認知症の手前の状態である軽度認知障害(MCI)に気付くより早い段階で表れるという。

 ▽本人を尊重し返納促す

 認知症には主にアルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性、前頭側頭型の4種類がある。新井主任教授によると、運転中の症状にはその種類ごとに特徴があり、アルツハイマー型では道に迷いやすくなる。脳血管性では手足にまひが、レビー小体型ではパーキンソン病に見られるような運動障害が生じることがあり、運転に支障を来し得る。さらに、前頭側頭型では信号無視やスピード違反などをしやすくなるという。

 改正道交法では、認知機能検査と医師の診察で認知症と診断された場合は免許取り消しになる。認知機能の低下を自覚したら、免許の自主返納が望ましい。家族は高齢運転者のプライドを傷つけないように配慮しながら、「加害者にならないように」との家族の心配を丁寧に伝えることが大切だ。

 新井主任教授は「認知症の人だけが事故を起こすわけではなく、事故をゼロにするのは簡単なことではありません。通学路のガードレールや高速道路の逆走防止ゲートの設置を徹底するなど、被害を最小限にとどめるための対策が必要でしょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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