10代の発症も-前立腺炎
根気よく治療の継続を
前立腺炎は、中年以降に発症しやすい前立腺肥大症や前立腺がんとは異なり、10代後半から発症する。命に関わる病気ではないが、慢性の場合、長期の治療が必要になる。大阪市立大学医学部付属病院(大阪市)泌尿器科の内田潤次准教授に聞いた。
前立腺肥大症や前立腺がんとは違い、若い世代の発症も
▽痛みや残尿、頻尿など
前立腺は膀胱(ぼうこう)のすぐ下にある男性の生殖器の一つで、前立腺液という精液成分の一部を分泌している。前立腺炎は原因や症状の表れ方によって、〔1〕急性細菌性前立腺炎〔2〕慢性細菌性前立腺炎〔3〕非細菌性の慢性前立腺炎〔4〕症状がなく、検査で偶然確認できた無症候性炎症性前立腺炎―に分けられる。前立腺炎患者の85~90%が、原因のはっきりしない〔3〕や〔4〕の前立腺炎だと内田准教授は指摘する。「座った姿勢が長時間に及ぶタクシーやトラックの運転手、事務職に多く、通勤や通学で自転車によく乗る人にも少なくありません」
慢性前立腺炎の症状は、原因によらず痛みや不快感が膀胱や陰茎、陰嚢(いんのう)と肛門の間、下腹部などに生じ、残尿感や頻尿、排尿時の痛みなども表れる。尿道にカテーテルを挿入するなどの経尿道操作や経尿道的手術に伴って生じることの多い急性細菌性前立腺炎の場合は症状がより重くなり、慢性の症状に加えて排尿困難や尿が出なくなる尿閉、血尿、38度以上の高熱のほか、ごくまれに敗血症に至ることもある。
▽時間かけ一貫した治療を
前立腺炎が疑われる場合は、尿や血液の検査を行い細菌感染と炎症の有無を調べる。細菌感染による前立腺炎の治療は、軽症であれば、1カ月ほど抗菌薬を飲む。症状は1~2週間で改善するが、服用期間が短いと慢性化する可能性があるからだ。高熱を伴い症状が重い場合は入院し、抗菌薬を1週間ほど点滴で投与する。
一方、原因のはっきりしない前立腺炎でも、場合によっては抗菌薬を服用する。症状に応じて、抗炎症薬や鎮痛薬、漢方薬なども処方される。抗不安薬の服用で症状が治まるケースもある。しかし、症状は軽減するものの完治は難しいという。
内田准教授は「症状が改善しないからと病院を変える患者さんがいます。一貫した治療が受けられず、病状が後戻りしかねません。時間をかけてゆっくりと治療を続けることが重要です」と、病気と根気よく付き合っていくことの大切さを強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/07 11:00)