治療・予防

皮膚がんの前段階―ボーエン病
早期の手術で再発回避

 皮膚は最も外側の表皮とその下の真皮、さらに内側の皮下組織に分かれている。ボーエン病は表皮内に生じるがん(表皮内がん)で、皮膚がんの前段階の状態だという。ほっておくと次第に進行し命に関わるので、早期に治療を行う必要がある。埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)皮膚腫瘍科・皮膚科の山本明史教授は「がんと聞くと怖い感じがしますが、ボーエン病は早期に手術をすれば治癒が可能で、再発もまずありません」と話す。

左腰背部にできたボーエン病の患部。痛みやかゆみはなく、徐々に大きくなっていくのが特徴(埼玉医科大学国際医療センター皮膚腫瘍科・皮膚科提供)

左腰背部にできたボーエン病の患部。痛みやかゆみはなく、徐々に大きくなっていくのが特徴(埼玉医科大学国際医療センター皮膚腫瘍科・皮膚科提供)

 ▽赤や茶のシミが拡大

 ボーエン病の初期には、赤色や茶色がかった、境界が比較的明瞭で、円形やいびつな形をしたシミができる。表面はザラザラとしてフケのようなものが付着し、痛みもかゆみもない。一見すると、湿疹ができたかのようだ。

 山本教授は「体のどこにでもでき、通常は1カ所ですが、数カ所にできる場合もあります。湿疹だと思って塗り薬を付けても良くならず、ゆっくりと年単位で大きくなるのが特徴です」と説明する。がんが進行して真皮にまで達すると、完全な皮膚がん(有棘=ゆうきょく=細胞がん)となり、しこりを作って盛り上がったり潰瘍ができたりする。血管やリンパ管を通して転移が起こることもある。

 ▽切除手術が有効

 ボーエン病の原因は解明されていない。「年齢的には中年以降に多いですが、人種差や男女差、遺伝的な傾向は見当たりません」と山本教授。かつては梅毒の治療や農薬にヒ素が使われていたので、ヒ素中毒と関係があるとされてきたが、山本教授によると、そのような症例はほとんど目にしたことがないという。胃がん肺がんなど他のがんと合併するといわれるほか、ヒト乳頭腫ウイルスと呼ばれる、いぼを作るウイルスが原因だとする説もあるが、はっきりとしたことは分かっていない。

 ボーエン病は、皮膚組織を一部採取して調べる検査(生検)で診断される。治療は手術になり、病変部を切除して縫い合わせる。切除範囲が大きい場合は、他の部分から皮膚を移植することもあるという。山本教授は「ボーエン病は表皮内がんのうちに治療すれば完治する病気です。完全に病変部が切除できれば、再発はまずありません」と強調する。

 少しずつ大きくなる湿疹のようなシミに気付いたら、早めに皮膚科専門医を受診したい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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