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「フレイル」対策で寝たきり予防〔上〕
人生の最後まで元気に自分らしく

(2)疲労感=ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする

 体がだるくて、歯も磨きたくない、ご飯を食べるのもおっくう、お風呂にも入りたくないという状態は、気を付けたほうがいいです。

握力を除き、記憶を追加。自記式で可能

握力を除き、記憶を追加。自記式で可能

(3)身体活動の低下=軽い運動、体操、定期的な運動をしていない

 定年退職し、外出する用事がなければ、出かけるきっかけがなくなり、家に閉じこもりがちになる。「フレイルの人はだいたい1日中、テレビのお守りをしていて、ほとんど外出しない。これは明らかに活動量の低下に当てはまります」

 ゴルフなどは人とコミュニケーションをとり、体を動かすので、お勧めだというが、耳が聞こえづらくなったり、物忘れがひどくなったりすると、人と交わること自体が嫌になってしまい、足が遠のいていくという。

(4)歩行速度の低下=毎秒1メートルより遅い

 ふだん自分の歩行速度を秒速で測ることはないので、わかりにくい基準といえる。「『外来では信号を渡るのに、ちょっと不安が出てきていませんか』という聞き方をしています。歩くのが遅くなるということは、筋力低下、バランス感覚の低下、視力の低下などの身体能力が低下していることの現れです」

(5)筋力低下=男性握力26キロ未満、女性18キロ未満

 握力が全身の筋肉と相関することから握力が目安とされているが、家に握力計がある人はあまりいないだろう。「椅子に座ったり立ったりを5回繰り返すのに13秒以上かかると、3年後には日常生活の活動が制限されるというデータがあります」

 ◇年のせいで済ませない

 いずれも「年のせい」で済ませてしまいそうな項目ばかりだが、人生100年時代をできるだけ健康にすごすためには、自然の成り行きに任せておくわけにはいかなくなってきた。

 「ほんの少し前までは医師ですら、加齢現象だから仕方がないというスタンスでした。しかし、フレイルは可逆的な状態。対策を取れば健康な状態に戻れるのだから、悪くなっていくのを食い止めなければいけなません」

インタビューに応える長尾哲彦院長

インタビューに応える長尾哲彦院長

 ◇健康寿命とのギャップ

 かつては自然な加齢現象と捉えられていた状態をフレイルと定義して、介入していく方針が示された背景には、日本人の健康寿命と平均寿命の間に大きなギャップがあるという問題がある。

 厚生労働省の2016年の調査によると、男性は平均寿命80.98歳に対し、健康寿命は72.4歳と約8年のギャップがあり、女性は平均寿命87.14歳に対し、健康寿命は74.79歳と約12年のギャップがある。

 この差の部分は、介護などが必要になる期間となる。日本人は長寿を世界に誇るとはいえ、その質を見ると要介護の期間が長い。

 「健康な状態から介護の状態に入っていく、ちょうど中間の状態がフレイルですから、何とか要介護状態にならないよう元に戻すことが重要。そこを何とかして超高齢社会を活気あるものにしようと、国も医療者も考えています」

 医療技術の進歩や栄養状態の改善によって、長くなった寿命をどう生きるのか一人ひとりが考え、実行する時期にきている。フレイル予防はお金がかからず、日々の小さな努力でできる。次回は、フレイルの具体的予防策を紹介する。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

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