治療・予防

失禁の原因見極め対応
認知症患者の排せつケア

 認知症患者の尿失禁や便失禁は、その屈辱感や不快感によって患者を傷つける。そして、徘徊(はいかい)や妄想といった認知症の症状を悪化させ、介護者の負担増につながる。この悪循環を断つためには、大本の原因である排せつ障害を改善することが重要だ。NPO法人日本コンチネンス協会(東京都杉並区)の西村かおる会長は「患者の不快感を減らすことで、症状が安定し、介護負担が軽減するという好循環が生まれます」と指摘する。

 ▽トラブルの真の原因を探る

 排せつ障害は、年のせい、認知症のせいで、どうしようもないと考えられがちだ。しかし本当にそうだろうか、と西村会長は問い掛ける。

本人の気持ちに配慮した支援を

本人の気持ちに配慮した支援を

 「大事なのは、介護者が排せつ障害の全てを認知症が原因と決めつけないこと。個別の症状の背景にある原因を探り、適切に治療、ケアすることです」と言う。

 そう考えると、解決法が見えてくる例がある。例えば、薬の副作用による便失禁下痢)なら、薬剤の変更で改善する。また、ぼうこう炎や前立腺肥大などが尿失禁の原因であれば、それらの治療で徘徊は減る。「排せつ障害の真の原因を探り、改善を図れば、多くの問題が解決されます。個別の問題を段階的に整理していくことが大切です」

 ▽排尿・排便日誌の活用を

 活用したいのが排尿日誌や排便日誌だ。トイレに行った時間や排出した尿・便の量など、毎日の排せつ状況を記録する。診断の一助になるだけでなく、排せつのタイミングを把握できる。「認知症の患者は、尿意や便意を介護者に言葉で的確に伝えることができません。周囲が察するしか方法はなく、日誌はその点でも有効です」

 一方、患者がトイレに行くことを拒否する場合は、本人の気持ちに配慮した支援や言葉掛けが必要になる。「トイレに行きたくないのに誘導されると、不可解な経験となり、嫌悪感を抱きます。自分ならどうかと患者の立場に立って考えることが、ケアのヒントになります」

 尿失禁の対策としておむつが必要になるケースがあるが、「おむつを付けたくないのは皆同じです。嫌がるのは自分でトイレに行こうという自立心の表れだと捉えれば、決して悪いことばかりではありません」。

 排せつは日々の食事の結果でもある。西村会長は「快食、快眠、快便という当たり前を整えてあげましょう。体調や心の安定にもつながります」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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