治療・予防

ヒラメの刺し身で起こるクドア食中毒
一過性の下痢や嘔吐

 夏から秋の時期にヒラメの刺し身やマリネを食べて気分が悪くなったという経験があれば、それはクドアという寄生虫による食中毒の可能性がある。かつて原因不明の食中毒の増加が問題になったが、その原因の一つがクドアだった。東京都健康安全研究センター(東京都新宿区)微生物部食品微生物研究科の鈴木淳科長は「クドア食中毒は症状が一過性の下痢嘔吐(おうと)で、ほとんどが速やかに回復します」という。

症状は一過性で、速やかに回復することが多い

症状は一過性で、速やかに回復することが多い

 ▽24時間以内に回復

 食中毒の原因物質とされたクドアはクドア・セプテンプンクタータという粘液胞子虫類で、主にヒラメの筋肉に寄生する。クドアは約10マイクロメートル(0.01ミリ)の大きさで、極嚢(きょくのう)と呼ばれる袋状の細胞が6、7個集まって花びら状の形をしているのが特徴だ。クドアの生態は明らかになってないが、ゴカイやイトミミズなどの環形動物とヒラメとの間を行き来して寄生し、ヒラメ同士で水平感染することはないと考えられている。

 ヒラメの体内に侵入したクドアは、密集し集合体を形成する。ヒラメの身1グラム当たり10の5~6乗個以上のクドアが寄生していると、食中毒を起こしやすいといわれている。

 クドアの潜伏期間は4、5時間と短い。クドア食中毒の主な症状は下痢嘔吐など。いずれも一過性で、たいていは発症後24時間以内に回復する。夕食にヒラメの刺し身を食べて食中毒を起こしても、翌朝には治っていることが多い。

 ▽加熱調理で食中毒予防

 クドア食中毒が発生すると、保健所から厚生労働省に報告される。同省の統計では、この5年間の患者数は2014年429人、15年169人、16年259人、17年126人、18年155人となっている。

 鈴木科長によると、クドアの寄生は天然ヒラメより養殖ヒラメで多く見られるという。そのため水産庁は、クドアが寄生する稚魚の排除、飼育環境の清浄化、出荷前の検査など養殖場の管理を強化。それが功を奏しているようだ。

 クドア食中毒は8~10月に多く発生する。鈴木科長は「クドアは75度5分間以上の加熱か、マイナス20度4時間以上の冷凍で失活(危害を及ぼさなくなる)します。この時期にヒラメを生で食べるのに抵抗がある人は、加熱調理などで食中毒を防ぐことが可能です」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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