医学生のフィールド

将来のロールモデルになる人を探そう
慶応医学部有志が企画・運営する「明日の教室」

 「明日の教室」は、慶応義塾大学医学部の学生有志が企画・運営する、キャリア教育のためのプロジェクトだ。「少子高齢化がさらに進み、人工知能(AI)が発達する20年後、医療はどうなって医師に何が求められているのか、どんな世界にしたいのかをみんなで考え、自分のロールモデルになる人を探そう」という理念の下、約2カ月に1回のペースで、さまざまな分野の講師を招いて講演会と交流会を開催している。

 5年生の亀苔(かめのり)昌平さん、4年生の宮崎大志さんと稲葉友花さんに、プロジェクト立ち上げの経緯や思いについて聞いた。(聞き手・文 医療ライター・稲垣麻里子)

 ◇医学部卒の働き方も多様化、キャリア教育を

 ―この活動はどのようなきっかけで始まったのでしょうか。

 亀苔昌平さん
 亀苔さん 昨年(2018年)1月、慶応義塾大学医学教育統轄センターの門川俊明先生(教授)が僕を含めた3人の学生に声を掛けてくださいました。少し前までは医学部を卒業したら臨床医か研究者になるというキャリアパスがほとんどだったように思いますが、最近は医学の知識を生かして起業したり、医師の資格を生かして一般企業に就職したりする人もいて、医学部卒でも働き方の多様化が進んでいます。

 しかし、医学部の場合、将来の仕事について相談したり、情報収集したりできる仕組みがあまりありません。将来の可能性を広げるために、何か始めてみたらどうかと門川先生から提案があったのがきっかけです。

 ―医学生も働き方の多様性を考えるようになってきたのですね。

 亀苔さん はい。それで、門川先生にお力添えを頂きながら、僕たち学生が主体となってキャリア講座を企画しました。具体的には、学生が話を聞きたい先生を講師として招き、「医療×〇〇」といったテーマで話をしていただこうというものです。

 さらに、一方的に講演を聴くだけではなく、興味を持った学生が演者とつながるきっかけづくりもできる場にしようと、話がまとまりました。その後、3人で各学年のコアメンバーとなる学生にピンポイントで声をかけ、宮崎さんや稲葉さんにも参加してもらいました。

 講演会の様子
 ―学生のうちから未来の医療や将来の仕事について、考えている人は多いのですか。

 亀苔さん 自分たちがいつも真面目な話をしているわけではありません(笑)。しかし個人的な印象だと、最近企業でインターンをしたり、起業やビジネスに興味を持ったりと、医学以外のことに目を向ける人が以前より増えてきたような気がします。そういうことを考えるのは一部の人で、卒業後はほとんどの人が臨床に進むのでしょうが、たとえ臨床医になるにしても、視野を広げることで、将来の選択肢や可能性が広がると考えています。


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