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キャリアパス教育に重点
幅広い臨床経験が積める―新潟大学医学部

108年続く「医学大運動会」(新潟大医学部提供)

 ◇108年続く伝統イベント

 新潟大学では1911年から各科対抗の「医学大運動会」を開催している。学生が運営し、東日本大震災の年をのぞいて108年間続いてきた伝統のイベントだ。

 「中にはこうしたイベントに参加できない学生もいます。こうした活動に一緒に参加できる、付き合える社会性は医療人にとって必要です。みんなで力を合わせて取り組む体験は、チーム医療や研究の推進にもつながります」

 今年9月には初の取り組みとして、メディカルコンペティションNを開催する。学生が臨床実習で経験した症例をもとに、医師国家試験の臨床問題を1人2題ずつ作成し、皆で解答するイベント。成績優秀者や優秀作を表彰するが、真の狙いは学生の主体的な参加にある。

 ◇精神科を選択

 染矢医学部長は大分県ののどかな環境で生まれ育った。幼少期を過ごした田舎にはかかりつけ医が一人いて、医師の仕事を身近に感じていた。「その先生と話をするのが好きで、随分かわいがってもらいました。そうした環境が医師を目指すのに影響したかもしれません」。高校時代は、数学と物理が好きだったが「世の中により役立てる仕事を」と考えて医学部進学を決めた。

 東京大学医学部に入学したが、都会での生活にはいまいちなじめなかったという。「友達はいっぱいいるし、遊びもたくさんあって楽しかったものの、どこかフィットしない、カルチャーギャップを感じていました」

 そして学生時代に心の問題に興味を持つようになり、精神科を選んだ。「たとえ体の具合が悪くても精神が健全であれば、ある意味、豊かに生きていける。でも、精神が病むとそういうわけにはいかない。そういう精神の重要さ、奥深さに魅力を感じています」

インタビューに応える染矢俊幸医学部長

 ◇医師の醍醐味

 卒後3年で赴任した滋賀医科大学で国際的な精神科診断学に出会い、精神薬理学、薬理遺伝学を徹底的に学んだ。

 「一人ひとりの患者にとって適切な薬を適切な量、適切なタイミング、適切な方法で投与するための研究に取り組みました。例えば、うつ病が治らない場合に多いのは、診断と治療方針が間違っているから。他で治らなかった患者さんを自分が診てよくできたとき、自分の存在意義や役割を実感でき、医師としての醍醐味(だいごみ)を感じる」

 精神科医の仕事は人生経験を重ねるほど成長できる。どんな挫折も無駄にならない。そんな精神科医療が面白いと染矢医学部長は話す。

 ◇「医師は言葉も処方する」

 染矢医学部長は毎年4月、新しく入ってきた研修医に「うさぎとかめ」の話をするという。

 「学生時代は能力が高いうさぎの方が成績もいい。でも社会に出てからは、亀でも好きでやっている人の方が地道に努力し、成果を上げる。高い能力を持ちながら、何も成しえていない人は山ほどいる。向き不向きよりも好きかどうか。好きであればやり続けることができる。だから、好きになれる能力が一番重要なんです」

 また医師を志す学生には、本当に医師という仕事が好きかどうかをよく考えて進路を決めてほしいと話す。

 「医師にとって一番大事なのは困っている人に寄り添う親切さ。人工知能(AI)が導入されても、(患者は)人に聞いてほしい、言葉をかけてほしいもので、人間の仕事は残る。以前、『医者は薬を処方するだけでなく、言葉も処方する』と言った研修医がいましたが、その通りだと思います」

 今後は知識や技術に偏らず、人間性にもアプローチできる教育に取り組む方針だ。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

【新潟大学医学部 沿革】

1910年 新潟医学専門学校設立
  22年 新潟医科大学設立
  49年 新制大学新潟大学が発足、医学部を設置
  55年 大学院医学研究科(博士課程)を設置
2018年 iPSポータル(京都市)とiPS細胞を使った創薬・再生医療で連携・協力する協定を締結

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