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キャリアパス教育に重点
幅広い臨床経験が積める―新潟大学医学部

 新潟大学医学部は官立新潟専門学校として設立され、2020年に創立110周年を迎える。東京から新幹線で2時間余りというアクセスの良さから、首都圏からも多くの学生が集まるが、新潟県の人口当たりの医師数は全国で下から2番目。医師不足が続く中、全国で最も早く医学教育分野別認証評価を受審するなど、医学教育改革で先陣を切ってきた。染矢俊幸医学部長は「新潟大学医学部は地域医療に貢献しつつ、そこで発生するすべての疾患に対応できる医師を育ててきたことが一番の強み」と話す。

新潟大学医学部の新赤門(新潟大医学部提供)

新潟大学医学部の新赤門(新潟大医学部提供)

 ◇学生と患者のコミュニケーション

 13年度に導入された医学教育分野別認証制度によって、臨床実習を見学型から参加型に切り替える必要が生じた。各大学は順次対応しているものの、具体的にどのように進めていくかは模索している段階。

 「参加型にするには、学生が患者さんに直接接していろんな経験をすることが必要。ただ、外科系の場合『学生ですが、手技をさせていいですか』と聞いて、同意してもらえないことが多い。経験の豊富な医師にやってほしいという気持ちは分かりますが、次世代の医師をどうやって育成していくか国民全体で考えていかなくてはならない問題」だという。

 現在は全国医学部長会議が臨床実習を行う学生にスチューデントドクターとしての資格を与え対応しているが、患者の協力を得るためには「スチューデントドクターを法制化するなど国からのお墨付きを与える仕組みが必要ではないでしょうか」と問題提起する。

 ◇キャリアパス教育

 卒業後、研修医が都会に集中し、地方の大学はいかに研修医を確保するか試行錯誤している。新潟大学でも、一昨年までは卒業生百二十数人中、県内に残るのは約50人、他県からの流入をあわせても県内の研修医は八十数人程度だった。県の人口を考えると必要数の半分しかいない。そこで、新たな試みとして16年からキャリアパス(職務経歴)に関する講習を開始した。

 「学生は卒後2年の初期研修を都会の有名病院で行うことを考えがちですが、新潟では都会の研修病院では経験できないほどたくさんの症例を経験できますし、指導医が親身になって指導してくれます。初期研修2年の先にあるもっと長いスパンで自分の医師人生を考えよう、という話をしています」

 17年秋の医師臨床研修マッチングで130人もの学生が新潟県内での研修を希望した。「キャリアパス講習を始めたとき、『目指せ150人』と言ったら、周囲に『無理でしょう』と笑われましたが、もう手の届くところにきています。あと数年のうちに目標達成したいですね」

日露医学交流(新潟大医学部提供)

日露医学交流(新潟大医学部提供)

◇研究、国際貢献、災害医療

 新潟大学医学部は、脳神経や腎臓の研究の歴史が古く、他にもがん、循環器、消化器、細胞生物学、感染症などで国際的な評価を得ている。

 「特に10年ほど前から研究面の充実を図っていて、日本学術振興会の科学研究費の中でも規模が大きい「基盤研究(A)」を5人の医学科の研究者が取得しています。10年後に倍に増やせればと思います」

 国際貢献にも積極的に取り組み、ロシアやミャンマー、マレーシアなどアジア諸国との交流を活発に行い、夏には学生有志による日中・日露医学生交流が行われている。

 また、災害医療教育にも力を入れており、新潟県中越地震、中越沖地震という二度の大規模災害でも地道な医療支援活動を続けてきた。「災害時はいろいろな連携が必要になる。まさに地域医療教育の縮図。学生にとっても、関係機関といかにネットワークを作るかを学ぶいい機会になります」

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