医学生のフィールド

【医学生インタビュー】
新専門医制度ってどうなってるの?
日本専門医機構の寺本民生理事長に聞く・後編

◇地方の研修も積極的に受けてほしい

 ―専門医が専門性の高い医療機関で研修を受けるという目的であれば、志望者が大都市の大病院に集中して、地方の地域医療に影響が出るのではないかと言われていますが、その辺りはいかがでしょうか。

 寺本先生 実は専門医機構を立ち上げた時には、地域医療についてはほとんど考慮していませんでした。なぜかというと、研修は設備が整った大病院での質の担保を第一に考えていたからです。しかし、よくよく実態を考えてみると地方の方がむしろメリットがあるのではないかということが分かってきました。

 内科の研修実績を登録できる「J―OSLER」というシステムの話をしましたけれども、J―OSLERのデータを解析すると、東京とか大都市で研修している内容よりも、地方の病院の方が、多くの症例をしっかり診られるという結果も出てきているのです。

 皆さんの意識では、東京のような大きな都市で受けた方がより専門的なことが勉強できると思うかもしれませんが、実際のところ必ずしもそうではないのです。そういったデータを示しながら、地方の研修も積極的に受けてもらいたいと思っています。

 例えば、外科の手術は大都市だと早期に見つかるのであまり合併症のない、非常にシンプルな外科手術が多い。でも地方の病院では、かなり複雑で、転移もあったりする、そういう外科手術の症例もいっぱいある。そうすると都会で得られるスキルと地方で得られるスキルとは、若干違いがある。どちらがいいというわけではないけど、その両方を経験するべきだと思うんです。

 そういった意味で言うと、皆さんが何となく大都市がいいと思っているかもしれませんが、スキルを高めるには必ずしもそうではないのです。

 私自身も若い時に、東大で研修して、それから茨城県の日立市で研修しました。その時の専門は消化器でしたが、白血病や肺の病気やさまざまな病気を診ることができて、幅広い知識が得られました。これからは地方での地域医療がどんどん必要とされるので、研修時代に経験することはとても大切だと思います。

 ◇社会的な立場の自覚が重要


 ―医学生という立場でインタビューさせていただいたので、最後にこれから医師を目指す学生や若い医師に向けてメッセージをお願いします。

 寺本先生 医師という職業は大変ですが、とても魅力的で誇りの持てる仕事です。

 自分が持っている誇りをいかにして担保していくか、要するに誇りをきちんと患者さんや国民に示していく、そのための努力は絶対に必要だと思います。自分たちが医療に対して責任を持ってやっていくという意識を常に持っていてほしいですね。

 その一つの視点として、社会学的に自分が医師としてやっていることが、日本の医療にどのような影響を与えるのか、自分の立場を考えながら働くということが重要なのではないかと思います。

 ―本日は貴重なお話をありがとうございました。

 ◆寺本 民生氏(てらもと・たみお) 1973年東京大学医学部卒。脂質異常症や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病全般の診療に携わり、現在、帝京大学臨床研究センター長。2018年7月に日本専門医機構理事長に就任した。

 13年に開業した寺本内科歯科クリニックでは、「LSM(ライフ・スタイル・モディフィケーション)=生活習慣の改善」という理念を掲げ、内科と歯科の連携による診療に当たっている。

 ◆明日の教室 慶応義塾大学医学部学生の有志が企画するキャリア教育のプロジェクト。「参加者の誰かの人生を変えてしまうようなパワーを持った講師」を招き、定期的に講演会を行っている。(了)




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