治療・予防

手のひらに大量の汗―手掌多汗症 
外用薬、注射薬に加え、手術が選択肢に

 多汗症は、気温の上昇と関係なく、過剰に発汗する病気だ。手のひら、足の裏、脇の下など特定の部位の汗が増える「局所多汗症」のうち、手のひらに多量の汗をかいて、握手ができないといった症状が表れる「手掌(しゅしょう)多汗症」は、人口の2.8%~5.3%で起こると推計されている。

 ▽外用薬が第一選択

 多汗症は、発汗を促す交感神経に異常があり、「汗を出せ」という信号が過剰に送られることが原因とされる。多汗症治療の専門外来である山本英博クリニック(東京都渋谷区)の山本英博院長は「局所多汗症は遺伝的要因が大きく、先天的な病気と言えます。

 幼少期から症状が見られるのが特徴です。大人になってから急に発汗量が増えた場合は、甲状腺機能亢進(こうしん)症や更年期障害など他の病気が原因である可能性があります」と説明する。

 治療薬は、発汗を抑える塩化アルミニウムの外用薬が第一選択となる。汗腺にごく軽微な炎症を起こし、汗の出口をふさぐ作用がある。手や足の多汗症に対しては、水を入れた専用機器に手足を浸して弱い電流を流し、汗腺の出口をふさぐ「イオントフォレーシス」が第一選択となる。脇の下の多汗症には、交感神経から汗線へと伝わる刺激の伝達を遮断するボトックス注射も行われる。

 内服薬の臭化プロバンテリンも保険適用となっているが、効果にばらつきがあり、便秘や口の渇きなどの副作用が多い。長期使用は認知症リスクを高めるとの報告もあり、「それほど使われなくなってきています」と山本院長。

 ▽重症の場合は手術も

 重度の手掌多汗症に対しては、「交感神経遮断術」という手術が行われている。全身麻酔下で内視鏡(胸腔鏡)を用いて、交感神経を切断する。手のひらの汗を止める効果はほぼ確実に表れるが、背中や腰など別の部位の発汗量が増える「代償性発汗」と呼ばれる副作用が起こりやすい。

 副作用の対策を探る中で山本院長は、神経に刺激を与えて微細な血流変化を測定できる機器を併用することで、代償性発汗を抑制し、治療成績を向上させる治療法を見いだした。どの神経を処置するとどの部位の発汗が停止し、どの部位に代償性発汗が起こるかが事前に予測できるという。「手のひらの発汗がかなり改善し、代償性発汗の発生率を1%未満まで抑えられます」

 生活の質(QOL)が損なわれる病気なだけに、過剰な発汗が続くときは、多汗症に詳しい皮膚科医や専門外来を受診したい。(メディカルトリビューン=時事)

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