Dr.純子のメディカルサロン

コロナやテレワークから目を守る方法は
「温める?冷やす?」「洗うはOK?」 井手武・東京ビジョンアイクリニック阿佐ケ谷院長

 ◆目は温める?冷やす?

 海原 眼精疲労の場合、目の周りの筋肉を温めるといいと言われますが、蒸気アイマスクなどを使用するのは有効でしょうか。

 また、結膜浮腫や、その他の病気になったときは、目を温めていいのか、冷やした方がいいのか。あるいは、何もしない方がいいのか。目の周りを温めて動かすような電気器具も売られていますが、こうした器具は役立ちますか。

診察する井手先生[同先生提供]

診察する井手先生[同先生提供]


 井手 皆さんがイメージしやすいもので、温湿布と冷湿布を考えてもらえばいいかと思います。

 冷湿布は、皮膚の温度を低下させ、冷刺激で血管を収縮させ、神経の働きを抑えることで、一過性の痛みや腫れを和らげます。

 湿布剤は、皮膚温度を上昇させ、温刺激による血行促進で、炎症物質の新陳代謝を速め、消炎・鎮痛を図ります。

 このような原則から考えていただくと、眼精疲労は、疲労物資の除去や筋肉を動かしやすくすることを目的として、血行促進のため、温めるのがよいと考えられます。

 結膜浮腫ですが、代表的な原因はアレルギー性結膜炎です。これは、血管の透過性が上がることで、症状が出ますが、炎症物質の新陳代謝という意味では、「温める」と思われるかもしれません。

 でも、アレルギー性結膜炎によるかゆみが、お風呂など温かい環境で起こりやすいことをイメージしてもらえれば、冷やして血管を収縮させ、神経の働きを抑えた方が効果が高いと考えられます。

 一方、電気器具ですが、EMS(電気で筋肉を刺激する機器)は、血流改善をうたっていますので、温刺激と同等だと考えると、血行はよくなりますが、アレルギー反応は増大させてしまいます。

 ◆コロナ対策で「目を洗う」は正しいか

 海原 今、コロナ対策で、外出から帰った時に目を洗う人もいます。目を洗うというのは、手洗いやうがいなどと同様に、予防になるのでしょうか。

 井手 コロナウイルスは、「人から人へ」以外に、「モノから人へ」という経路もいわれてます。

 医療の現場で、ゴーグルやフェイスシールドを着けているのも、ウイルスが目から入らないようにするためということからも、洗い流すというのは、原理的に悪くないと思います。

 一つだけ注意が必要なのは その洗う溶液や点眼液にウイルスが入っていると、逆にコロナ感染のリスクを上げることになるので、点眼瓶にまつげが当たったりしないようにすることです。

 海原 市販の点眼薬の中には、清涼感があるものがありますが、使ってもいいのですか。

 井手 コロナに関する点眼は基本、物理的に洗い流すのが目的なので 繰り返し使う場合には、あまり清涼感の強いものを使う必要はないと思います。

 清涼感のある点眼は、一時的には涙液分泌を刺激しますが、刺激を繰り返すことによって、逆に涙液分泌が減る可能性があります。

 このため、点眼していない時間帯に、洗い流す効果が低下する可能性があるかもしれません。ですので、刺激の少ない人工涙液タイプをお薦めします。

 ◆眼科もオンライン診療は可能?

 海原 今、コロナ感染拡大の影響で、遠隔診療が解禁になっていますが、眼科でも、こうした診療は可能でしょうか。電話だけでなく、ビデオ会議システムの「ズーム」「フェイスタイム」「スカイプ」なども使えるのでしょうか。

 井手 遠隔診療は、時限的措置とは言え、オンライン初診も解禁になっており、制度的には診療が可能です。家庭用の装置として、ある程度普及している心電図や血圧計などからのデータで経過を診れる診療科では、オンライン診療の普及が加速されると思います。

 ズーム、フェイスタイム、スカイプなど、汎用サービスを使った診療は現在、盛んに行われています。オンライン診療に関する指針において、汎用サービスに対する明らかな制限は見受けられませんが、セキュリティーに関しては、医師側にも責任があるため、そのあたりは指針を読んでもらう必要があるかと思います。

 当院眼科でも、診察を以前にしていて、急性疾患でない患者さんは、処方箋を電話再診で出すことも、かなり増えている実感があります。

 しかし、細隙灯顕微鏡や眼底を観察できるデバイスは、世の中には存在しておりますが、普及には至っていなため、診療は正直、まだ難しいという印象です。

 海原 いつも使っている目薬が切れてしまうような場合は、かかりつけの先生に電話などで相談するというのも一つの方法ですね。

(文 海原純子)

 井手 武(いで・たけし) 大阪大学医学部卒業。Bascom Palmer Eye Institute, University of Miami留学。自身も円錐角膜患者であることから円錐角膜を専門に診察を行っている。「患者さんのために、あえて患者さんを絡めない医療のプロ同士の暗黙知(経験的使っている知識だが、簡単に言葉で説明できない知識)のシェアリング」という視点で、医療従事者の教育プロジェクトとして現在、「薬剤師と医師」「視能訓練士(ORT)と医師」の二つを同時並行で展開している。


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