治療・予防

結膜炎引き起こす「まつげダニ」 
清潔保って予防

 まぶたの腫れ、かゆみ、目がごろごろする、まつげが抜ける、といった症状が長期的に続く場合は、ダニが原因かもしれない。まつげの毛根周辺で見つかるデモデックス(ニキビダニ)は「まつげダニ」とも呼ばれ、眼瞼(がんけん)炎や結膜炎などの目の病気の原因になることがある。北里大学北里研究所病院(東京都港区)眼科の川北哲也部長に聞いた。 

 ▽まつげの根元などに寄生

 デモデックスは、幼児を除く大抵の人の顔に生息するダニの一種だ。ヒトや動物の血を吸うマダニ、アレルギーを起こすヒョウヒダニなどと違って、基本的には無症状と言われている。目ではまつげの根元と、まぶたの縁にある皮脂腺に別の種類が寄生し、皮脂などを餌にしている。「われわれの研究では、健康な日本人の10%程度がまつげの根元にまつげダニを保有していました」と川北部長は説明する。

 まつげダニの生息自体は問題ではないが、増え過ぎるとまぶたに炎症を生じる眼瞼炎の原因となり、まぶたの腫れ、目のかゆみやまつげの抜け毛といった症状を起こす。「進行すると角膜炎や結膜炎を起こし、重症になると視力が低下する恐れもあります」と川北部長。眼科手術の後などで長期にわたり目の周りを洗えない人、顔に長期間ステロイド軟こうを塗っている人は、このダニが増えやすいという。

 ▽まつげのフケがサイン

 まつげに乾いたフケが見られ、抗生剤やステロイド剤による治療で治らない眼瞼炎や結膜炎が起きた場合、まつげダニが増殖している可能性がある。

 しかし、現時点ではまつげダニを治療する薬剤はない。目の周りを清潔に保つことが唯一の対処法とされる。海外では、「ティーツリーオイル」というエッセンシャルオイルをまつげの生え際に塗ると、まつげダニが減少するとの報告がある。しかし日本では保険適用されていないため、目への刺激が少ない市販のアイシャンプーでまつげの根元を洗浄することを川北部長は勧めている。ただし、まぶたを強くこすることが長期に及ぶと、まぶたが垂れ下がり目が十分開きにくくなる眼瞼下垂の原因にもなり得るため、1日2回、なでるようにやさしく洗うのがポイントだ。

 「最近では、目の手術後に眼帯をずっと外さなかった人や、目やにを付けたまま放置していた高齢者で、まつげダニの増殖を経験しています。清潔な状態を保つことが増殖予防になるので、日頃から目の周りの洗浄を心掛けましょう」と、川北部長はアドバイスする。 (メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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