中高年女性に多いまぶたのトラブル
開けづらく、痛みや異物感も―眼瞼けいれん 国際医療福祉大学視機能療法学科 原直人教授
「眼瞼(がんけん)けいれん」は、両目のまぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)が過剰に緊張してまばたきがしづらくなる病気。目の痛み、目の周りの異物感などの症状も伴っている。進行は遅いが、治ることはまれだ。この病気に詳しい国際医療福祉大学(栃木県大田原市)視機能療法学科の原直人教授に聞いた。
眼瞼けいれんの自己チェックシート
▽事故につながる危険も
眼瞼けいれんは、その名称からまぶたがピクピク動く病気と間違われやすいが、実際は、目が乾く、まぶしい、目を開けられなくなり、目をつぶっていたほうが楽といった症状をもたらす病気だ。ドライアイを合併していることが多く、単にドライアイと誤診されることもある。進行すると、自分の意思に反して目が閉じてしまい、歩行中に電柱にぶつかったり、運転中に接触事故を起こしたりする原因にもなる。60代以降、特に女性に起こりやすい。
抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入薬などの長期服用による薬剤性眼瞼けいれん、パーキンソン病や脳梗塞などの病気に伴って起こる2次性眼瞼けいれんの場合もあるが、多くは原因不明である。
原教授は「最近の研究で、眼瞼けいれんの患者では、脳の視床という部位の興奮が高まっていて、眼輪筋が自分の意思に反して収縮を起こし、目を開けにくくなることが分かってきました」と説明する。介護疲れや家族との死別、仕事などでストレスを感じる出来事を経験した人に多く、「ストレスが発症の誘因となると考えています」。
▽注射療法が有効
根本的な治療法はなく、第1選択はボツリヌス毒素(商品名ボトックス)療法だ。細菌の毒素であるボツリヌストキシンをまぶたや眉間に注射し、顔面の筋肉の緊張を緩めて症状を緩和する。1回の注射で3~4カ月は効果が持続する。約8割の患者で改善効果が得られている。長期間の治療により寛解する人もいる。ほかに、まぶしさを軽減しつつ明るさを保つ「遮光メガネ」の使用も大切だ。
なお、抗けいれん薬、睡眠薬・抗不安薬などを治療に用いることがあるが、原教授は注意が必要だと指摘する。「一部の抗けいれん薬・抗不安薬は、短期的にはよく効きますが、逆に長期的な服用は眼瞼けいれんを誘発したり、症状を悪化させたりする恐れがあり、勧められません。診断と治療は、まず眼科医を受診して、眼瞼けいれんと分かれば、神経眼科医を紹介してもらうのがよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/10/03 06:00)