喉の酷使で起こる声帯ポリープ
専門医療機関の受診を(山王病院国際医療福祉大学東京ボイスセンター 渡辺雄介センター長)
声帯に炎症性のこぶ(血腫)ができて、声がれや喉に違和感が生じる「声帯ポリープ」。歌ったり、大きな声を出したりすることが原因となるため、予防には日頃から声帯に負担をかけないようにすることが大切だ。山王病院(東京都港区)国際医療福祉大学東京ボイスセンターの渡辺雄介センター長に聞いた。
声帯の位置と声帯ポリープ
▽声帯のひだに血腫を形成
声帯は喉頭の内側の気道の入り口にある器官。左右2本のひだを動かして、肺から吐き出された息を振動させることで声が出る。
渡辺センター長は「声帯ポリープは声帯のひだに血腫ができる病気です」と説明する。ポリープは1~10ミリほどの大きさで、ひだの左右どちらかにできる。
大きな声で長時間話す、歌うなど声帯を酷使することが原因だ。「声を出す時、声帯のひだは非常に素早く振動します。無理な発声が続くと、声帯のひだの微小血管が破れて内出血し、血腫ができ、声帯粘膜が膨れてきます。これを繰り返すとポリープになると考えられます」
最も多く表れる症状はかすれ声で、喉に違和感を覚えたり、声が長く続かなくなったりする例もある。痛みを伴うことは少ない。歌手、アナウンサー、教師、保育士など、職業柄、日常的に声をよく出す人に起こりやすいと言われる。
▽10日ほど様子見て受診
声がれを来す病気はさまざまあるが、10日ほどたっても症状が改善しない場合は、受診が勧められる。渡辺センター長は「耳鼻咽喉科や喉の専門治療ができる医療機関で診てもらいましょう」とアドバイスする。
声帯ポリープの診断には、内視鏡検査(喉頭ファイバースコープ)のほか、声帯粘膜の振動を調べるストロボスコープで発声にどの程度障害があるか調べる。
治療としては、日常生活で声を極力出さないように気を付けながら、ステロイド薬などを投与する保存療法を行う。1カ月ほど続けても改善しなければ手術を検討する。全身麻酔をして顕微鏡を使いポリープを切除する方法が一般的だ。術後は安静にして、3日間は声を出すのを控える必要がある。
予防には、声帯に負担をかけない発声方法を身に付けることも重要で、言語聴覚士が声帯を傷めない話し方や歌い方などのリハビリテーションに積極的に取り組んでいる施設もある。渡辺センター長は「声の不調は日常生活や気持ちにも大きく影響します。治療をきちんと受けて治しましょう」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/10/23 06:00)