専門医の指導下で「食べて治す」
子どもの食物アレルギー(国立病院機構相模原病院臨床研究センター 佐藤さくら医師)
子どもから大人まで幅広い年齢層に見られる食物アレルギー。特に子どもの場合、年齢によって注意が必要な食べ物は異なる。国立病院機構相模原病院臨床研究センター(相模原市)の佐藤さくら医師に治療の現状と課題について聞いた。
年齢別に見た食物アレルギーの原因となる食物
▽原因食物を可能な限り摂取
食物アレルギーは、特定の食物に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因物質)に免疫機能が過剰に反応して起こる。乳児期の発症が最も多く、年齢が上がるとともに減る。「乳幼児の食物アレルギーは、小学校に入学するころまでに8割程度は自然に治ります」と佐藤医師は説明する。
じんましん、かゆみなどの皮膚症状が最も多いが、呼吸困難や意識障害など急激に全身症状が悪化(アナフィラキシー)し、命に関わることもある。
診断は「食物経口負荷試験」により行うのが基本だ。アレルギーの可能性が疑われた食べ物を医療機関で摂取してもらい、アレルギー症状が出現しないかを確認する。すでにアレルギーと診断された人も、症状が出現せずに食べられる範囲を確認するため、試験を定期的に行う。
「原因となる食べ物を必要以上に除去すると、食事の偏りで栄養不足、成長障害を招く恐れもあります。成長に合わせ、負荷試験で確認した症状の出ない範囲で少しずつ食べた方がよいというのが、最近の治療の考え方です。ただし自己判断は危険。必ず専門医の指導に従ってください」と佐藤医師は強調する。
▽急増するクルミによるアレルギー
アレルギーの原因となる3大食物は、鶏卵、牛乳、小麦。特に乳児期は、鶏卵が圧倒的に多い。1歳以降は、魚卵、木の実(ナッツ)類も加わる。7歳以降の学童期は、エビなどの甲殻類が増える。「平成29年の全国調査では、特に小さい子どもにクルミのアレルギーが増加していると分かりました」と佐藤医師。消費者庁もクルミのアレルギー表示について、「推奨」から「義務」(特定原材料に含める)へと変更することを検討中だ。
ただ、注意していても、誤食によってアレルギー症状が表れる。アナフィラキシーへの備えとして、患者本人と保護者だけでなく、保育所や学校職員に対し、アドレナリン自己注射薬(エピペン)の使い方の指導が行われている。「全国の保育所の3割程度で誤食事故が発生しているのが現状です。事故を避けるためには、医師の指導の上、保護者と施設職員との間での情報共有が重要です」と訴える。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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