治療・予防

どうする? コロナ下のがん治療
自己判断せず、主治医に相談を(北里大学病院集学的がん診療センター 佐々木治一郎センター長)

 乳がんの治療を受けていた女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスに感染して亡くなったことで、がん患者に不安や動揺が広がった。コロナ下のがん治療についてどう考えればいいか、北里大学病院(相模原市)集学的がん診療センターの佐々木治一郎センター長に聞いた。

がん患者が新型コロナ流行時に知っておきたいこと

 ▽感染のリスクと重症化のリスク

 がん患者はコロナに感染するリスクが高いとする向きもあるが、佐々木センター長によると、がん患者のコロナ感染リスクを健康な人と厳密に比べた研究は見当たらないという(2020年9月時点)。「3密(密閉・密集・密接)などの状況では、新型コロナウイルスに免疫を持たない人は等しく感染すると考えられます。がん患者だからコロナに感染しやすいとは言い切れません」

 一方で、感染した場合にコロナが重症化する可能性はある。世界保健機関(WHO)と中国が約5万6千人のコロナ患者を調査したデータでは、がん患者の致死率は7.6%で、持病がない人(1.4%)よりも高かった。ただし、「高血圧がある人では8.4%なので、それと同程度だと言えます」と説明する。また、このデータではがんの部位や治療の影響は調べていないため、すべてのがん患者が重症化するとは考えなくてよいという。

 ▽放射線治療は影響なし

 がん患者のコロナ重症化に影響する要因として、年齢、喫煙習慣、免疫に影響するがん治療などが考えられる。例えば、喫煙歴が長い肺がん患者では肺の傷みがより大きい可能性があるし、抗がん剤は血液の製造工場である骨髄の働きを抑えるため、免疫を担う白血球を減らしてしまう。

 岡江さんの訃報から、放射線治療が免疫力を下げたため重症化したという情報が広まったが、科学的根拠に基づくと「それは正しくない」と佐々木センター長は否定する。抗がん剤と組み合わせるなどした場合は別として、一般的な放射線治療が免疫の働きを低下させることはほとんどないという。

 コロナ対策としては手指の衛生やマスクの着用、3密を避けるといった基本的なことを挙げる。がん治療の進め方については治療目的や内容を踏まえて主治医と相談するのがよい。例えば「早期がんや良性腫瘍などでは手術延期も検討する」「内服の抗がん剤なら、1回の処方日数を延長して通院回数を減らす」などが考えられる。

 「疑問や不安があれば、自己判断せず主治医とよく話しましょう」と佐々木センター長。その上で、「がん関連学会のウェブサイトに掲載されている一般向け情報や全国のがん診療連携拠点病院に設置されているがん相談支援センターなども活用してほしい」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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