治療・予防

コロナで検診減る
がん早期発見に足かせ

 新型コロナウイルス感染症の流行で、受け入れ医療機関の逼迫(ひっぱく)とともに問題になっているのが、他の疾患の受診控えやがん検診などの受診率低下だ。症状の進行を発見する機会が失われ、最悪の場合は「手遅れ」となってしまう。特に、年単位の間隔で実施されている健康診断や人間ドック、がん検診は、1度機会を逃すと影響は大きい。

健康診断とがん検診に関する意向

 ◇受診中止や延期

 製薬会社のジョンソン・エンド・ジョンソンは2020年10月、全国の20~79歳の男女1万5000人を対象に、健康診断やがん検診についての意識調査を実施。「新型コロナへの感染の危険」を理由に、多くの人が受診を中止したり延期していたりしたことが分かった。11月以降の感染の再拡大でこの傾向はより強まる恐れがある、と専門医は危惧している。

 調査によると、20年4月以降に予定されていた健康診断とがん検診について、「21年度は控えたい」との回答が、それぞれ30.7%と33.9%だった。がん検診については、これまで受診したことがあった40歳以上の男女7054人に限ると、「控えたい」が26.7%に上った。

 「20年度ではなく21年度に受診する」とした理由については、「健康診断」で43.1%、胃がん検診で36.8%が「新型コロナへの感染リスク」を挙げた。他のがん検診でも同様の傾向にあるとされる。

 ◇感染を恐れる

 一方で、「体調不良や異常を感じても医療機関の受診を控えたか」との質問については、「一時控えた」と「現在も延期している」を合わせて36.1%だった。年代別では、20代から40代が目立つ。特に「手足のしびれやもつれ、激しい頭痛」など早期の受診・治療が必要な脳血管障害を疑わせる症状でも受診を控えた、との回答が23.6%に達した。理由としては、「体調や症状より、コロナの感染リスクの不安が大きかった」、「コロナの感染リスクを絶対に回避したいから」などが多かった。

佐野武・がん研究会有明病院長

 ◇がん専門病院の憂慮

 新型コロナ感染を恐れ、検診を敬遠する傾向を専門医はどう見ているのだろうか。

 がんの治療に定評があるがん研究会有明病院。佐野武院長は「日本のがん治療は、検診などの定期的な検査ではっきりした自覚症状がまだ現れない早期のがんを発見することで、治癒率や生存率を引き上げてきた。コロナにより検査を受けない人が増えれば、より進行した状態になるまで発見できないがんが増え、比例して重症化や治療が難しい人も増えてしまう」と指摘する。

 有明病院でも、20年4月から9月にかけて新型コロナ流行の影響でがん検診の受診件数は減少し、一時、検診センターが閉鎖された。その後受診者数は戻ったものの、佐野院長は「自治体や企業が実施している対策型検診では、現在も受診者数は平年に比べて大きく減る傾向が続いている」と言う。

胃がん検診の上部消化管内視鏡検査=がん研究会有明病院提供

 ◇検診は続けることに意味

 「日本人の2人に1人は、がんになるとはいっても、それは生涯を通じての話だ。1回1回の検診では『異常なし』がほとんどだろう。しかし、毎年検査を受け続けるからこそ、早期発見という『ご褒美』がもらえる」

 コロナ以前でも、がん検診の受診率は欧米に比べて低かった。これがより低下すれば、数年後に進行がんの患者数が増加する恐れもある。「1年間の穴があけば、一定の確率で見落としが発生することを知ってもらいたい」と、佐野院長は強調する。

 ◇数年後に深刻な影響

 もう一つ心配されるのが、腹痛や胃の不調など軽症と考えられがちな症状が出ても、医療機関を受診しない人や検診などを見送ってしまう人が増えている点だ。今回の調査でも、「コロナの感染拡大の影響による疾患リスクへの不安」という設問では、「コロナへの感染」や「検査や手術が先送りにされる」などに次いで「健康診断や人間ドックを見送ることで病気の発見が遅れること」(64.6%)、「がん検診を受けないことで、がんの早期発見が遅れること」(63.1%)が挙げられている。

感染・疾患リスクへの不安

 「ちょっとした胃もたれで内視鏡検査を受け、早期の胃がんが見つかった。このように、軽い異常で医療機関を受診して早期のがんが発見されるというケースは珍しくない。軽い症状があっても医療機関を受診しないことは、検診を受けないのと同様に、早期発見の可能性を低くしてしまう」。佐野院長は、医療機関への受診控えについても危惧を抱き、「20年末からの流行拡大で地域の医療機関の受け入れ能力が低下すれば、検診受診率の低下と受診控えの影響はより深刻な形で数年後に出てくるだろう」と懸念している。 (了)


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