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プールで運動不足を解消しよう
~元気に夏を過ごすきっかけに~ 医学博士 福田千晶

 暑くなるとプールが恋しくなる人もいるでしょう。夏は水泳や水中ウオーキングで運動不足を解消してはいかがでしょうか?

水泳ではバランスよく筋力が強化され、肺活量も増加する

水泳ではバランスよく筋力が強化され、肺活量も増加する

 運動は気持ちよく楽しいことが大切

 昨年から今年にかけては、在宅勤務やステイホームで運動不足になったと自覚している人がいっぱいいます。しかし、夏は「暑くて動きたくない」という気持ちもあります。そんな時には、プールでの運動がお勧めです。

 泳ぎが得意な人は水泳がいいですし、苦手な人は、まずはビート板を使用して、バタ足から始めてもいいでしょう。泳げない人は、水中ウオーキングでも運動効果が期待できます。水泳や水中ウオーキングは、いろいろな体の悩みを解消して、元気に夏を過ごす良いきっかけになりそうです。

 「水着になるのが恥ずかしい」という人もいますが、最近のプールではいろいろな年代の人たち、さまざまな体形の人たちが、お気に入りの水着を着用して、気持ち良さそうに水に入っています。恥ずかしいことはありません。

 「体重が増え過ぎて、歩くと膝が痛くなる」という人も、水の中では浮力が助けてくれます。水中では、陸上に比べてはるかに少ない重さしか足にはかかりません。肩まで水に漬かると、足にかかる体重は陸上の約10分の1、胸ぐらいの深さの水中なら約3分の1に、へそまでの深さでも約半分に低下します。ですから、足に障害のある人のリハビリにも、水泳や水中ウオーキングは勧められているのです。

 「肩凝りがつらい」という人も、水泳は試す価値があります。泳ぐ時は腕を大きく動かすので、肩の周囲の筋肉が適度に伸ばされ、血行も良くなります。しかも、左右対称の動きをするので、体のゆがみをつくりにくいのが特徴です。水中ウオーキングでも足の動きに合わせて腕を動かしますが、特に肘を後方に引く時に大きく動かすことがポイントです。

 「立ちっぱなしの仕事だから、足がむくんで重だるくて、歩きたくない」という人も、水圧のマッサージ効果で、足のむくみや不快な足のダルさを解消してくれます。足のむくみが気になる人にとって、仕事の後の軽い運動に水中運動はピッタリです。

 「ストレスがたまっている」という人も、プールという非日常の空間で、靴や服を脱ぎ、水着という裸に近い超軽装で動くことは、なんとも言えない開放感があります。また、他の人が泳ぐ時のリズミカルな水の音が心地よく響き、気持ちが落ち着くこともあります。つらくない範囲のプールでの運動は、ストレス発散にもなるのです。

 「体形を整えたい」という人にも、水泳はお勧めです。上半身と下半身の筋力をバランスよく強化でき、肺活量が増加して胸板も厚くなるので、適度に筋肉が付いた健康的でメリハリのある美しいボディーを目指せます。

日本選手の活躍で自分も始めたくなるかも

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 ◇生活習慣病の対策としての水中運動

 水泳の消費エネルギーは比較的高く、継続することで脂質異常症や糖尿病の対策になります。また、有酸素運動でもあるので、軽度の高血圧で「適度な運動をしましょう」と言われている人は、水泳をしていいか主治医に相談してください。息継ぎの苦手な人が健康のために水泳をすることは適していませんが、水中ウオーキングならOKということもあります。

 肥満の解消にも、定期的に水泳を続けることは、効果が期待できます。水泳で消費できるエネルギーは、泳ぐスピードや強度、性別や体格によってかなり異なり、さまざまな研究成果が報告されています。

 ゆったりしたペースで30分ぐらい泳ぐと200キロカロリー程度は消費されるはずですが、泳いでいる途中で休むこともあるので、実際の消費エネルギーはそれより少なくなるでしょう。スピードを上げてハードに泳ぎ続ければ、消費エネルギーも500キロカロリーぐらいまで増えますし、ゆったりペースでも1時間くらい泳ぎ続けられれば消費エネルギーはかなり増えます。水中ウオーキングも、1時間続ければ200キロカロリー以上は消費するでしょうから、時間の割に消費カロリーは多いと言えます。

 体重を1キロ減らすには、7200キロカロリー余分に消費すればよい計算になるので、週3回の水泳と食事に注意することで、1カ月に1キロずつ減量することは、それほど難しくないでしょう。そして、痩せることで内臓脂肪が減り、生活習慣病の改善に効果が期待できるのです。

 ◇スイミングクラブへの入会は今がチャンス?

 健康へのメリットがある水泳にも欠点や注意点はあります。まず、泳ぐ時は息をこらえますから、血圧が上がることがあります。プールに入る前には血圧を測定して、血圧が高くないことを確認してから入るようにしてください。

 プールから上がった後に、耳の中を綿棒などで掃除したくなります。でも、こすり過ぎると、柔らかくなった耳の中を傷つけて、外耳炎になるので気を付けましょう。

 プールの塩素で髪や皮膚が傷むことがあります。プールから上がったら、シャワーを浴びてプールの水を洗い流します。そして、皮膚や髪の保湿とケアを心掛けましょう。

 水の中にいても、熱中症の危険はあります。頑張って泳いで体の中から熱くなった時や水温が高い時、炎天下の屋外プールなどでは熱中症のリスクが高くなります。泳ぐ前後、時には途中でも水分補給をしてください。休憩する時は炎天下ではなく、日陰を選ぶことも大切です。

 水泳は東京オリンピックで日本選手の活躍が期待される種目の一つです。選手の活躍に感動すると、その種目に興味が高まり、自分も始めたいと思うようになります。最近では、自治体のプール以外にも、公立学校のプールを一般公開している所も多く、水泳は身近な運動になっています。オリンピック効果でスイミングクラブやプールのあるスポーツクラブの入会者は増えると思われます。オリンピック後は、入会待ちになることもあり得ますから、希望者は今のうちに入会した方がいいかもしれませんね。(了)

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 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。


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