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コロナ太りは見た目の変化だけじゃない
~早めに生活習慣の改善を~ 医学博士 福田千晶

 昨年からの新型コロナウイルス感染拡大により、緊急事態宣言やステイホームなどの言葉が日常会話によく登場するようになりました。「コロナ太り」という言葉も、よく聞かれます。もちろん「コロナ太り」は医学用語ではありませんし、きっちりした定義はありません。でも、コロナ禍での生活の変化によって太ってしまったことを「コロナ太り」と呼んでいます。人間ドックや健康診断の受診者の中にも、コロナ太りの人はいっぱいいます。

問題は体重の増加だけではない

 ◇原因はさまざま

 コロナ禍で体重が1年間で3キロくらい増えた人は、かなり多いですし、10キロも増えている人さえいます。理由を尋ねると、さまざまです。

・在宅勤務になり通勤で歩かなくなった
・スポーツジムが閉鎖になった、あるいはジムへ行く機会が減ってしまった
・サークルでのスポーツが禁止
・緊急事態宣言中は休日も家で過ごし、活動量がかなり減少
・スーパーマーケットへ買い物に行くのを感染予防のため週1、2回に減らした
・通販や宅配を利用することを覚え、外出が減った上に、食料品の買い置きが増えた
・家にいる時間が増え、間食が増えた
・家飲みが増えて飲酒量が増えた
・ストレスがたまり、飲食で発散していた
・マスクをしていると、おしゃれする気になれず、服装も楽なものばかり着ている

緊急事態宣言、まん延防止等重点措置などを受けて「自粛」を真面目に守った人には、太る要因が複数あったわけです。

 ◇体内で起きている変化

 太ると気になるのは、外見という人が多いですが、太ることの怖さは見た目の変化だけではありません。

 人間ドックの受診で考えてみると、まず体重を測定された時点で体重増加が判明します。腹囲測定で「この結果になります」と見せられて、数字の大きさにびっくりすることもあるかもしれません。一般的に、体重が1キロ増えると、腹囲も1センチ程度は増大しています。

 次に、血圧を測定すると、コロナ太りした人は血圧も上がっていることがあります。採血による血液検査の結果が出ると、総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪の検査値が上昇しているかもしれません。俗に善玉コレステロールとも呼ばれるHDL-コレステロールは、血管内の余分な脂質を一時的な貯蔵場所である肝臓まで運んでくれる役割があります。ですから、ある程度は多めに存在してほしいのですが、運動不足などでHDL-コレステロールは減少します。コロナ太りの人では、このHDL-コレステロールが前年より減少している人が多く見られます。

 血中の脂質だけでなく、肝機能の指標でもあるAST(GOT)、ALT(GPT)なども上昇している人が多いです。血糖値や1~2カ月前の血糖値の平均的な状況を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)も上がっていることがあります。尿酸値に関しては、飲酒量との関連もありますが、やはりコロナ太りになった人では前回より上昇していることがあります。

 定期健康診断では、腹部超音波検査は行わないことが多いですが、人間ドックでは腹部超音波検査を行います。肝機能の数値が上昇した人は、腹部超音波検査の結果で「脂肪肝」と記されていないか、確認してください。血液中で余った脂質は、肝臓に蓄えられますが、貯蔵された脂肪が多くなり過ぎると、脂肪肝になり腹部超音波検査で判明します。

 「太った」と自覚している人は、皮下脂肪が増えていたり、内臓脂肪が増えていたりすることは想像しやすいでしょう。しかし、実際は血液中のLDL-コレステロールが増えていたり、肝臓に脂肪がたまり過ぎて脂肪肝になっていたり、体にはいろいろ変化が起きているのです。

 そして、その変化がやがて動脈硬化を促進させて、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞の誘因になると思うと怖いことです。脂肪肝も、もし改善できないと、いずれ肝硬変になる場合もあります。さらに肝硬変になった人のごく一部の人々ですが、肝臓がんになるので、最初のきっかけである脂肪肝も侮れません。

「ステイホーム」で日常生活の活動量が減った=2020年5月、東京都豊島区

 ◇すぐに見直したい生活習慣

 すでにコロナ太りしてしまった人も、過去には戻れません。この1年半、コロナ禍で健康には悪い生活習慣を送ってしまったとしても、あすからは生活を改善して、コロナ太り解消に向けて進んでいきましょう。

 在宅勤務で通勤がなくなった人は、せめて朝夕それぞれ、今まで通勤で歩いていた距離を歩きましょう。スポーツジムに通えなくなった人は、家でできる運動をしたり、ウオーキングやジョギングを定期的に行ったりするのもよいでしょう。家でエクササイズの動画を見ながら運動するのもよいし、フィットネス系のゲームなどで楽しく身体を動かすことも継続すれば効果が期待できます。

 ステイホーム生活で、家での間食が増えた人は、間食をきっぱりやめましょう。夏は冷たいスイーツを食べたくなりますが、我慢も必要です。家飲みで飲酒量が増えてしまった人は、飲酒量を半分に減らすことからスタートしてはいかがでしょうか。もちろん、お菓子や酒類の買いだめをやめることも大切です。

 まず、きょうから毎日体重を測定し、運動する習慣と食生活の改善を始めましょう。コロナ太りの深刻さに個人差はありますが、生活を見直してコロナ禍の前の体重に戻ることを一つの目標にしてください。身体が少しでも軽くなり、引き締まって動きやすくなると、気持ちも軽やかになり、もっと元気になれることでしょう。

 プロレスラーの棚橋弘至選手(44)は昨年、ぽっちゃり体形の自身の写真をSNSにアップしていましたが、緊急事態宣言が解除され試合が再開されることになると、1カ月ぐらいであっという間に体を引き締めてリングに上がれる体を作ったのには驚きました。そして、いつの間にかファンが期待する見事なボディーに戻っていたのです。さすがにトップレスラー、プロはすごいですね。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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