治療・予防

長引くストレス、子どもにも
コロナとメンタルへルス(国立成育医療研究センターこころの診療部 田中恭子診療部長)

 新型コロナウイルスの感染拡大の長期化が、子どもの心にも影響を及ぼしている。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)こころの診療部児童・思春期リエゾン診療科の田中恭子診療部長は「ストレスに長くさらされていると心が疲れ、気分が落ち込みます。体の症状として表れるケースもあります」と話す。

 ▽15~30%にうつ症状

 同センターが2020年11~12月に行ったアンケート調査では、回答した924人の子どものうち、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状があった。例えば、気分が落ち込む、物事への興味や関心がなくなる、疲れた感じがする、眠れない、または眠り過ぎる―などだ。

 「長引くコロナ禍で、気持ちの変化がうかがえます」と田中診療部長は指摘する。性格がもともと前向きな子どもなら、ストレスを跳ね返せるが、多感で繊細、完璧主義といった性格、発達の遅れ、知的障害などの背景があると、他の子どもよりも苦しく感じる可能性があるという。

 また、「家庭内暴力など、家族の機能が低下している場合や親が経済的な不安を抱えている場合も、子どものストレスが長引くようです」。

 変化に気付くには、落ち着きがない、朝起きられない、登園・登校を渋るといった行動や、立ちくらみ、頭痛、腹痛など体の症状に気を配るのがよい。

 ▽深呼吸などでセルフケア

 ストレスへの対処はどうすればよいか。「お絵かき、ペットと遊ぶなど、お子さん自身が既に行っている方法があると思います。自傷・他害や物を壊すなどの行為でなければ、今までのやり方を認めて、続けるようにしましょう」と田中診療部長。

 手軽にできる方法が深呼吸。6~8秒かけておなかを膨らませるようにゆっくり息を吸い、いったん止めて同じ秒数で吐く。呼吸に集中し、雑念を忘れるようにする。

 田中診療部長は「コロナ下の生活に関する子どもの疑問に答え、子どもの納得を得るのが大切です。『なぜ、これくらいのことでつらいの』と否定せず、子どもの気持ちに共感してほしい」と話す。一方で、「心身の不調が2週間以上続くようなら、1人で抱え込まず、身近な医療機関や保健・福祉機関に相談しましょう」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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