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夏バテから秋バテへ
~季節の変わり目の体調管理~ 医学博士 福田千晶

 9月になりましたが、まだ暑く感じる日もあります。8月の猛暑の頃にバテて体調が不良になることを「夏バテ」と言いますが、最近では、9月に入って秋の気配を感じる頃になって自覚する同様の不調を「秋バテ」と称するようになっています。

夏の暑さで疲れがたまる頃(EPA時事)

 ◇夏バテの原因

 私が幼い頃から夏バテという言葉はあったと記憶しております。時期としては、夏の暑い盛りから夏の後半に「夏バテしちゃって」などと言うことが多いようです。夏の暑さに伴い、食欲不振、疲れやすい、だるい、元気が出ない、といった症状が出ることを夏バテと称しています。

 原因は、さまざまです。

(1)暑さによる寝苦しさで睡眠不足
(2)汗をかくため、体内の水分やミネラルが不足
(3)食欲がなくて、サッパリしたものしか食べられず、栄養バランスが乱れる
(4)屋外の暑さとクーラーによる冷えや温度差との調整が体内で追いつかない
(5)暑いので運動しづらく運動不足
(6)職場では交代で夏休みを取るため、人が少ないので忙しさが増す
(7)上司が夏休みで緊張感が足りず、ダラケてしまい調子が出ない
(8)子どもが夏休みで家にいる
(9)預けられた孫の相手でエネルギーを消費
(10)強い日差しを浴びることで疲れる

 さらに一昨年までは、夏は旅行やイベントなども盛りだくさん。楽しいこともありますが、体力を消耗することもあり、その疲れで夏バテした人もいます。今年はコロナ禍で、旅行やイベントなどが少なく、ストレスを発散できる機会が乏しいので、それが心身の疲労の蓄積になり、夏バテを感じた人もいます。

 かつては、夏の暑さが収まり、朝夕だけでも涼しくなると、夜はグッスリ眠れて、食欲も回復して、元気に秋を迎えられたものです。しかし、最近は新たに「秋バテ」という言葉が生まれています。

しっかり体調管理して元気に秋を迎えたい

 ◇秋バテとは

 9月になると、子どもは夏休みが終わって学校が始まります。職場でも、8月は休会だった会議が復活し、仕事はフル回転で時間に追われることも増えます。今年は、コロナ禍なので、例年とは少し様子が異なることもありますが、「夏休み気分は終わり、忙しい日々が戻ってきた」と実感するでしょう。

 秋は気象状況も変動しやすく、猛暑日もあって、熱中症になる人もいます。日によっては、急な気温低下で体が冷え、関節痛が悪化することもあります。さらに台風もあり、気温や湿度、気圧の変動により、体調をコントロールしきれず、秋バテになる人もいます。

 秋バテは医学的な病名ではないので、診断基準や正確な定義はありませんが、二つのパターンがあります。

(1)夏バテしたまま回復できずに秋も不調を引きずる
(2)夏は元気に過ごせたが、秋になったら体調が悪く「バテた」と自覚する

 いずれにしても、心身のエネルギーが不足していることもあり、ちょっとした変化や気象状況にも、体調が悪化したと自覚してしまうわけです。何とか、この季節に体調を良くして、寒さに向かうこれからのシーズンを元気に過ごし、秋冬にはやる風邪などの病気を予防したいものです。

 秋バテの対策としては、以下のようなことが挙げられます。自分ができることから始めてみましょう。

(1)気象情報を確認し、気温や天候に合った衣服や空調などの工夫をする
(2)睡眠時間を確保して、グッスリ眠る
(3)シャワー浴だけでなく、浴槽の湯に漬かって冷えを癒やす
(4)栄養バランスを整える。冷たいものの取り過ぎに注意。食べ過ぎ、飲み過ぎをしない
(5)スケジュールはゆとりを持つ
(6)暑い日は水分摂取を怠らない
(7)肌寒い日は秋冬物の服を着たり、掛け布団を秋仕様にしたりする
(8)適度な運動で血行を良くする、低気圧に弱い人は耳と耳周りをマッサージ
(9)飲酒やたばこ、菓子など嗜好(しこう)品が増え過ぎないように注意
(10)広い空、美しい景色、オレンジ色の夕日などを眺め、ゆっくり深呼吸

上着やストールで気温の変化に対応

 ◇体調管理の工夫

 暑い夏に比べて過ごしやすくなるはずの秋ですが、台風の発生もあり、安らげない日々も多いと言えます。台風が上陸する前に、体がダルくなったり、頭痛や関節痛などの不調が出たりすると、出勤や通学も含めて外出がおっくうになります。これは「これから大雨や強風で危険だから、外出しないで家で静かに過ごしましょう」という、自然の警告とも考えられます。仕事や学校を休めないまでも、急を要しない予定は延期するなど工夫をして、なるべく早く帰宅して家で静かに過ごすべきです。そして、台風が去り、天気が良くなったら、適度な運動をして、体も心もほぐしましょう。

 気圧の変動は耳の深部で察知すると言われ、耳やその周囲の血行が悪いと、過敏に反応して、より大げさに気圧変動を感じるとも言われています。耳を各方向に軽く引っ張ったり、マッサージをしたりしておくと、気圧の変動を過剰に感じにくくなり、体調不良の予防につながるようです。低気圧で不調になる人は試す価値がありそうです。

 私がこの季節に心掛けていることは、天気予報を調べて、気温によって服装や持参品を小まめに変えることです。朝夕の涼しくなる日は、足を冷やさない秋物のスカートやパンツルック。上着で調節できる服を着ます。真夏並みの暑さの予報なら、基本は夏服で、薄手のカーディガンを持参し、足元はサンダルで涼しくします。夏服でも秋を演出できるような茶色系の半袖シャツなどは便利です。この季節は、バッグには常にカーディガンやストールを持参して、暑さや冷えによる不快な思いを最小限にして、身体にかかる負担を軽減しています。

 クーラーをつけるかどうか迷う日もあるので、これも天気予報を参考に日によって調整します。特に夜間の気温がどうなるか調べておき、暑さや肌寒さで睡眠が中断されることなく朝までグッスリ眠れるように、その日に合った室温セットをしています。

 9月になると日照時間も徐々に短くなるので、夕方はせかされるようで気持ちにゆとりが持てない人もいます。さらに台風の不安、今年はコロナ関連のいろいろな不安も加わっています。体への負担だけでなく、精神的な負担も体調の変化につながります。夜は可能なら早めに家でのくつろぎタイムにして、栄養バランスの良い夕食を味わい、お風呂でゆっくり温まり、お風呂上がりには水分補給をしながらゆったりと過ごし、快適な寝室で一日を締めくくりましょう。今年は、秋バテ知らずで秋を楽しみたいですね。

 秋バテと思っていても、体調不良が2週間も続くなら、病気の可能性もあります。医療機関での受診もご検討ください。(了)

福田千晶氏


 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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