Dr.純子のメディカルサロン

20代のテレワークに落とし穴
~若手には特別な配慮と対策必要~

 テレワークが増えて以来、各企業で若い人の産業医面談が増えたという印象があります。もちろん「テレワークになってよかった」「仕事がやりやすい」という声もあるのですが、その一方で、入社1年目の社員が体調を崩して休職、そのまま退職してしまうというケースもあります。二極化しているように思えます。若い世代で何が起きているのでしょうか。その背景と対策を考えます。

(文 海原純子)

東北新幹線でのテレワークのイメージ(JR東日本提供)

東北新幹線でのテレワークのイメージ(JR東日本提供)

 【入社2年目、20代社員のケース】

 IT関連企業勤務しています。地方出身で一人暮らし。入社してすぐ、新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言を受け、勤務がテレワークになり、新入社員研修もリモートで実施されました。業務自体は、負荷が大きくならないように会社が配慮していましたが、夏は帰省できませんでした。秋ごろから、めまい頭痛などの体調不良を起こし、リモート会議にも遅れがちになりました。

 産業医は専門医での受診を勧めましたが、受診に抵抗感がありました。よく話を聞くと「業務で疑問があっても、質問がしにくい」「誰に相談していいか分からない」「同期ともほとんど会うことがなかったので孤独感も大きい」ということでした。

 ◇テレワークは幸せと不幸せを招く

 慶應義塾大学の前野隆司研究室とパーソル総合研究所は昨年、全国3000人のテレワーカーを対象に「はたらく人の幸せに関する調査」を実施しました。

 それによると、テレワーカーの方が、出社者よりも幸せ指標(「はたらく幸せ実感」や「はたらく幸せ因子」の状態)が良好な傾向にあることが分かりました。しかし、不幸せ指標(「はたらく不幸せ実感」や「はたらく不幸せ因子」の状態)は個人差があり、二極化の傾向も確認されました。

 ちなみに、働く幸せ指標の因子として重視されているのは、「自己成長因子」と「リフレッシュ因子」。その他に「チームワーク因子」「役割認識因子」などがあります。不幸せ指標の因子としては、「オーバーワーク因子」や「疎外感因子」「評価不満因子」「協同不全因子」「不快空間因子」などがあるとされています。

 まとめると以下のようになります。ご自分の働き方を点検してみてはどうでしょうか。

 〔幸せ指標の因子〕

 ▼ 自己成長因子 ▼ リフレッシュ因子 ▼ チームワーク因子 ▼ 役割認識因子

 ▼ 他者承認因子 ▼ 他者貢献因子 ▼ 自己裁量因子

 〔不幸せ指標の因子〕

 ▼ 自己抑圧因子 ▼ 理不尽因子 ▼ 不快空間因子 ▼ 疎外感因子

 ▼ オーバーワーク因子 ▼ 協同不全因子 ▼ 評価不満因子

テレワークの幸せと不幸せをそれぞれ7つの因子で分析した

テレワークの幸せと不幸せをそれぞれ7つの因子で分析した

 ◇20代の自己抑圧や疎外感に注意

 調査によると、全体的に30代以上では、テレワーカーの方が出社者より幸せ指標は良好だが、20代では、幸せ指標の因子である「チームワーク」や「他者貢献因子」が低く、不幸せ指標の因子である「自己抑圧因子」や「疎外感」が高いことが分かったということです。

 こうした調査からも、20代とそれ以上の年齢層では、テレワークによる心への影響は異なり、若者に対しては、特別な配慮と対策が必要であることが分かりました。

 入社2年目の社員のケースでも、社内での人間関係の構築ができないままテレワークになり、周囲とのコミュニケーションが不足して、疎外感が高まったということが考えられます。「コミュニケーションが構築されていないことを相談していいのか分からない」という状態で、「つい我慢してしまう」という自己抑圧が続いて、気持ちが落ち込んだと思われます。

 対策としては、リモート会議の他に雑談したり、気楽な話ができるティータイムのような時間をつくったりなどの工夫も必要でしょう。「自分が辛くてもなかなか言い出せない」という若い世代の声も多くあります。言い出せないまま我慢が続くことになっています。

 コロナによる出社制限は緩和されて来ていますが、リモートと出社の割合を今後、年代別に考慮していくことも必要と思われます。特に、テレワークが主体になるIT関連の企業などでは、若い年代の働き方や、研修の際に縦と横のコミュニケーションづくりを考慮することが必要と思われます。

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