Dr.純子のメディカルサロン

部下をメンタル不調に追い込む上司の態度7項目
~抱え込まず、相談するのが原則~

 職場の人間関係は、業務のパフォーマンスに大きく影響します。適応障害でうつ状態に陥り休職した人と面談すると、上司の態度にその要因があることが多いものです。その中で特に問題となる七つの傾向についてお話ししたいと思います。

(文 海原純子)


矛盾する業務命令に部下は混乱する

 ◇感情的で、矛盾する業務命令

(1)感情的な上司に部下は忖度疲れ

 感情のコントロールができず、機嫌が悪くなると口もきかなくなり返事をしない上司には迷惑する部下が多いものです。気分屋でご機嫌の時はいいけれど、気分が悪いと部下に当たるので、自分がターゲットにならないように気を使い、ピリピリして疲れ、部署の雰囲気も悪くなってしまいます。部下を「忖度(そんたく)疲れ」させると言えます。

(2)「ダブルバインド」で信頼感低下

 業務について質問すると、「いちいち全部言わないと分からないのか」と言う上司だと、疑問があっても質問ができません。自分で「こうかな」と思って業務を進めて提出すると、「そんなことをやってほしかったんじゃない。なぜ最初に聞かないのか」などと言われ、せっかく残業までしてやったのに、とがっかりすることもしばしば。仕事へのモチベーションは低下します。

 こうした二つの異なるメッセージを出す「ダブルバインド」は、業務の至る所で支障を来してしまいます。

 事前に「どんどん意見を出すように」「女性も遠慮しないで自分の企画を出すように」と言われ、企画会議で自分の企画を話したところ、「わきまえない」と言われモチベーションが低下したという女性もいます。矛盾する業務命令をされると上司への信頼感がなくなり、どちらを信じていいか分からず部下は混乱してメンタル不調を起こします。

スケジュールが立てにくいと、ストレスも解消しにくい

 ◇間の悪い指示やメール

(3)業務終了間際の依頼や休日のメールでプレッシャー

 勤務時間が終了するギリギリのタイミングで「あすまでに仕上げて」などと新たな業務を依頼されるのは、たまになら受け入れられても度重なるとやっていられなくなります。人と会う予定や家族とのイベントを入れていても予定を変更しなければならないことが重なり、嫌気が差したという声も聞きます。平日の業務後のスケジュールが立てられなくて、ストレスを解消しにくいと言えます。また、金曜日の業務終了間際に「来週月曜まで」と締め切りを出されると、週末の休みの間も頭の中で仕事を引きずることに。

 夜中のメールや休日のメールも部下には迷惑で、休日でもメールが来ると返事しなければいけないような気分になってしまいます。上司に「自分が思い付いた時にメールするが、返事はいいから」と言われても、部下にとってはプレシャーになるものです。

 ◇部下の能力や人格を公然と否定

(4)休んでいる社員への批判で不安に

 メンタル不調で休職中のスタッフについて、「メンタルが弱くて困る」「人手が足りなくなって部署が迷惑する」などと批判やぐちが多いのも不安になるものです。自分も休むと悪く言われるのではないかと不安になったり、休んでいる仲間が気の毒になったりして仕事へのモチベーションが低下します。

(5)会議や大勢の前で大声で能力否定

 大勢の前で能力を否定されたり人格否定の発言をされたりすると、その後にメンタル不調に陥る場合もしばしばです。業務内容の問題点を具体的に指摘しないで、「駄目なやつ」などと言われ、その後メンタル不調に陥るケースもあります。隣の部屋まで響くような大声で、机をたたくなど「圧が強い」態度もうんざりという声も聞きます。また、自分は言われていなくても同僚がこうした態度の上司に怒鳴られているのを聞いていて適応障害に陥る人もいます。

職場の人間関係はパフォーマンスに影響する

 ◇人の意見を聞かない

(6)違う意見はシャットアウト

 「自分は正しい」という信念があるため、人の話を聞かず、自分と違う意見は全否定。部下が自分と違う意見の場合、話を最後まで聞かず途中で遮り、「もういい、聞きたくない」とシャットアウトしてしまう。人に対してレッテル貼りをするので、一度「駄目なやつ」というレッテルを貼られるともう二度と相手にしてくれなくなるため、嫌われたらおしまいと落ち込む部下もいます。

(7)見て見ぬふり

 業務が多く、とても部署の手に負える分量ではないことが分かっていても、平気で部下に業務を与え知らん顔をする管理職がいると部下は適応障害に陥ります。人事総務から残業が多いと指摘されると「残業はしないように」と部下に指示。しかし締め切りは決まっていて業務量は多い。「残業するのは仕事の手順が悪く処理能力が低いからだ」と言われるので、部下はサービス残業に追い込まれたりします。

 ◇困った上司にどう対処するか

 令和のこの時代、健康経営が叫ばれている中で、なぜこんな態度の管理職がいるのかと疑問を感じるかもしれません。さまざまな立場の人が評価を行う「360度評価」を導入している企業ではこうした上司は存在できないのですが、そうでなければ、こうした管理職は一部上場企業でもいまだに存在しています。

 その部署は、高圧的な管理職の下で不満があっても我慢してしまう部下という構図で、部下は感情を抑圧し続けていることで適応障害に陥るという結果になります。嫌でも「ノー」と言わないことで体調を崩してしまうのです。

 高圧的な人は、相手が従順で反抗しないと分かるとどんどんエスカレートします。ですから高圧的管理職の暴走を早くストップさせる方法を考えることが大事です。

 会社の産業医を活用して内容を相談したり、社内の相談しやすく信頼できる人に相談したり、同じ部署の仲間で連携して対策を考えるなど、一人で抱え込まず困っている内容を話してみることが大事です。「抱え込まない」「相談する」ということを原則にして困った管理職対策を立ててください。(了)

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