医学の窓辺

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)の増悪因子
(PPPD を発症した症例は、急性めまい発症初期より PPPD の増悪因子を有する) 名古屋市立大学

 【背景】

 持続性知覚性姿勢誘発めまい(以下、PPPD)は、3カ月以上持続的にめまい症状を有する慢性機能性めまい疾患である。PPPDは、急性めまいに引き続いて発症するとされているが、急性めまい患者の中でどのような患者がPPPDを発症するかについては明らかにされていない。PPPDによるめまい症状は、①立位・歩行、②動作、③視覚刺激の三つの増悪因子により増悪することが特徴とされるため、本研究はこの増悪因子に着目した。急性めまい発症後3カ月未満の患者を対象とし、PPPDの発症に影響を与える因子を検討するために、PPPDの増悪因子と、めまいの重症度、前庭機能検査を調査した。

 【研究の成果】

 1)対象となった急性めまい発症3カ月未満の患者155症例に対して、初診時にPPPDの増悪因子に関する質問紙(NPQ)を用いて、増悪因子を有するか(合計点がカットオフ値の27点以上)について調査を行ったところ、50.3%と半数の症例で増悪因子を有していた。
 2)対象となった155症例のうち、後にPPPDを発症した症例は8例認めた。内7例は初診時に増悪因子を有していた。残る1例についても、NPQ25点と、カットオフ値以下ではあるが、三つの増悪因子にてめまい症状が増悪すると回答していた。
 3) PPPDを発症した8例と、PPPDを発症しなかった症例を比較したところ、PPPDを発症した症例群の方が有意にNPQで高得点を示していたが(図1)、めまいの重症度(DHI)や前庭機能検査(caloric testing、vHIT、cVEMP)による異常の有無については2群間で有意な差を認めなかった(図2、表1)。


図1 増悪因子の質問紙       


図2 めまい重症度の質問紙        

表1
前庭機能検査の異常の有無

 【研究のポイント】

 ・PPPDの三つの増悪因子とされる立位・歩行、動作、視覚刺激などでめまい症状が増悪するのは、PPPD症例に限らず、急性めまい患者の約半数が経験する症状であることが明らかになり、めまい患者にとって一般的な症状であることが分かった。
 ・急性めまいに引き続いてPPPDを発症した症例は、めまいの急性期からPPPDの増悪因子を有していたことが明らかになり、PPPD発症に影響を与える因子の1つであると示唆された。

 【研究の意義と今後の展開や社会的意義など】

 PPPDは若年者のめまいの中で頻度の高いめまい疾患であり、社会生活が送ることができないなど重症者が多く、社会的損失の大きい疾患であり、また、一度発症すると治療には長い期間を要する。また、PPPDは急性めまいに引き続いて発症されるとされるが、多くの急性めまい患者の中で発症予測因子を持つ患者を特定し、発症の予防的介入を行うことが重要と考える。

 本研究により、めまい発症初期よりPPPDの増悪因子を有することが、PPPDの発症に影響を与える因子の一つであることがわかり、予測因子である可能性が示唆された。今後の課題として、その他の予測因子の探索、大規模・前向きの検証、予測因子を有する症例に対する介入の発症予防効果の検討などが挙げられる。

 【用語解説】

 ・慢性機能性めまい疾患:脳や前庭器官などにめまい症状を説明できるような器質的な異常がなく、検査異常も認めないが、めまい症状は認められるものである。うつや不安など精神症状が関連する症例もあるが、精神症状がない症例も少なくない。
 ・PPPDの増悪因子に関する質問紙(NPQ):Niigata PPPD Questionnaireのことで、PPPDの増悪因子3項目について4つずつの質問がある。それぞれ0-6点で評価し、高得点ほど増悪因子で症状が悪化すると評価される。合計27点以上で、PPPDの診断の精度が高いとされている。
 ・めまいの重症度(DHI):Dizziness Handicap Inventoryのことで、めまいによる生活の支障度を評価する質問紙である。25項目の質問があり、それぞれ0-4点で評価し、高得点ほど重症と評価される。
 ・caloric testing(温度刺激検査)、vHIT(video Head Impulse Test)、cVEMP(前庭誘発頸筋電位検査):いずれも内耳前庭機能検査

 【研究助成】

 本研究はJSPS 科研費 JP17K11338、JP20K11161の助成を受けたものである。

 【論文タイトル】

 Presence of exacerbating factors of persistent perceptual-postural dizziness in patients with vestibular symptoms at initial presentation

 【著者】

 蒲谷嘉代子1*、玉井ひとみ1、岡島諒奈1、南方寿哉1、近藤真前2、中山明峰1、岩﨑真一1
 Kayoko Kabaya, Hitomi Tamai, Akina Okajima, Toshiya Minakata, Masaki Kondo,
Meiho Nakayama, and Shinichi Iwasaki
 
 所属

 1 名古屋市立大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学
 2 名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学

 【掲載学術誌】

 学術誌名 Laryngoscope Investigative Otolaryngology
 DOI番号:DOI: 10.1002/lio2.735

 【研究に関する問い合わせ】

 名古屋市立大学 大学院医学研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学 講師 蒲谷嘉代子
 住所 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
 TEL:052-853-8256  FAX:052-851-5300
 E-mail:kabaya@med.nagoya-cu.ac.jp

 【報道に関する問い合わせ】

 名古屋市立大学 医学・病院管理部経営課
 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1
 TEL:052-858-7114  FAX:052-858-7537
 E-mail:hpkouhou@sec.nagoya-cu.ac.jp


医学の窓辺