治療・予防

薬物治療が有効―重症筋無力症
~筋力低下する自己免疫疾患(脳神経内科千葉 川口直樹医師)~

 重症筋無力症は、神経と筋肉との接合部での異常で起こり、短時間に筋力の低下が生じる自己免疫疾患。国が指定する難病で、2018年の全国疫学調査によると、患者数は約3万人いる。重症筋無力症の症状や治療法などについて、医療法人同和会脳神経内科千葉(千葉市)の川口直樹医師に聞いた。

重症筋無力症の主な症状

重症筋無力症の主な症状

 ▽症状の表れ方に特徴

 重症筋無力症とは、自己抗体が筋肉に指令を出す神経伝達物質のアセチルコリンを受け取る側(受容体)を攻撃のターゲットにしてしまう自己免疫疾患の一つ。同受容体は本来異物ではなく、排除してはいけないもの。

 病気にかかると、まぶたが下がる、物が二重に見える、食事が飲み込みにくいなどの症状が出る。呼吸筋の障害で呼吸困難が生じ、人工呼吸器が必要になることもある。

 症状の表れ方にも特徴があり、「運動によって筋力が低下していく易疲労性(いひろうせい)、夕方になると症状が強くなる日内変動、日によって症状の出方が変わる日差変動などがあります」と川口所長。

 では、どんな治療法があるのか。胸腺異常を手術で取り除く胸腺摘除、ステロイド薬や免疫抑制薬などの薬物治療が有効で、今年から自己抗体を減少させることで神経伝達物質の受容体破壊を抑える薬剤が使えるようになるなど、選択肢は増えている。症状や副作用に対応しつつ、適切な治療を受けながら生活を送ることが可能だ。

 ▽周囲の理解不足で不安に

 重症筋無力症は、日常生活への影響を抑えるためにも早期に治療を始めることが望ましいが、専門医が少ない地域も多い。例えば、まぶたが下がる症状で眼科を受診しても、そこから専門医の診察を受けるまでに年単位の時間がかかることもある。

 病気への理解がなかなか進んでいないことも患者を追い詰めている。

 川口医師は「休みを入れながらでないと作業ができないのに、職場で『怠けている』と思われたり、就労が困難になったりするケースもあります。周囲の理解が得られないと、当事者は孤独や不安に陥り、社会参加への意欲低下を招くことにつながります」と、周囲の理解を呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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