インタビュー

乳がん、若い女性も注意=進歩する治療-武山浩医師

 ◇一生付き合う病気

 乳がんは比較的治療成績が良いがんといわれるが、あくまで早期に発見できた場合に限られる。乳房から骨や他の臓器にがん細胞が転移する「遠隔転移」が起きれば、状況は一転して厳しくなる。

 早期発見に有効なのがやはり検診だ。乳がんの場合は圧迫した乳房をX線撮影して腫瘍部を探す「マンモグラフィ検査」と乳房に超音波をあてて内部の変化を探す「超音波エコー検査」の二つがある。これらの検診の効果は複数の研究で確認されている。このうちマンモグラフィ検査はスタッフの技量に頼る部分が少なく、現在の日本では主流になっている。


 ただ乳腺が発達している比較的若い世代については、マンモグラフィ検査だけでは発達した乳腺に隠れて病変部を見落とす可能性が残る。武山教授は「マンモグラフィも超音波エコーもどちらも一長一短がある。理想を言えば、交互にこの二つの検査を受けるのがより安全といえる」とアドバイスする。

 それではいつから検診を受ければいいのだろうか。基本は自治体や企業の健保組合が実施している40歳からが有効、という見解が専門家の中でも主流だ。武山教授も基本的にはこの見解を認めつつも、「家族や祖母や母親、叔母や従姉妹(いとこ)の中で乳がん患者がいた場合は、要注意。特に2人以上の患者が出ている場合は遺伝的に発病しやすい可能性が考えられるので、40歳未満でも定期的に検査を受けることを勧めたい」と話している。

東京慈恵会医科大付属病院(東京都港区)で毎年、開催されている「乳がん教室」

 治療終了後10年間は、再発防止のための抗ホルモン療法や経過観察は必要だ。また更年期を迎え体調変化が起きた際にも、医師に相談するのがいいだろう。閉経による女性ホルモンの不足によって起きる更年期障害の治療には女性ホルモンの補充療法がしばしば行われるが、このホルモンが体内に残っていたがん細胞を活性化させてしまう可能性もあるからだ。

 「乳がんは治っても一生付き合っていく病気。東京慈恵会医科大付属病院では乳がん患者向けの公開講座を年1回開催しており、参加者の多くは元患者だ。患者同士や講師役の医師との間で情報交換や相談をしている。このような接点を持ち続けることも大切だろう」

(喜多壮太郎)

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