インタビュー

乳がん、若い女性も注意=進歩する治療-武山浩医師

 ただ、乳がんの特性にも注意してほしい。肺がん胃がんが治療後5年間で再発しなければ「完治」と見なすが、乳がんは治療後ある程度期間が過ぎても再発する可能性が10~15%ほどあるため、10年の治療・経過観察が必要になる。特に40代までに発病した患者の場合は、長い人生を「乳がんの予後」と付き合っていく必要がある。「中でも20代や30代で発病した場合は、妊娠や出産などのことも考えなければいけない。さまざまな面で乳がん治療後の影響は出てくる」

 原因の一つは、女性ホルモンへの影響だ。例えば、手術前の腫瘍縮小や経過観察後の再発防止のために、女性ホルモンの作用を抑える「抗ホルモン剤」が投与される。特に手術後の再発防止のための投与は年単位に及ぶことも珍しくない。

 「女性ホルモンの働きを抑制すれば妊娠しにくくなるし、ほてりや発汗など更年期に似た症状が、更年期の前より出ることもある。また、抗がん剤などを使用すれば妊娠が難しくなる可能性もある」

 同病院では化学療法前に患者が希望すれば受精卵子を凍結保存して治療後の妊娠に備える一方、治療後の経過観察中の患者が妊娠を希望した場合、抗ホルモン療法を一時停止することもあるという。「このためには産婦人科と密接な連携が必要になる。乳がんの治療が、がん治療の範囲だけで収まらない理由だ」


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