歯学部トップインタビュー

実践的な歯科医療人の育成を目指す
~歯科医師国家試験では高い合格率を維持―九州歯科大学~

 ◇基礎疾患を持つ患者の口腔機能を向上

 2016年、九州歯科大学は北九州市歯科医師会および北九州市内の各地区の歯科医師会と連携し、「DEMCOP(口腔保健・健康長寿推進センター)」の運営を開始した。DEMCOPとは開業している歯科医師や現役の歯科衛生士などを対象にしたリカレント教育のことで、基礎疾患などを持つ患者の治療、口腔ケアおよび口腔機能の向上を目的としている。

 「北九州市は政令指定都市の中で最も高齢化率が高く、高齢社会を背景に高齢患者が増加傾向にあります。高齢者の場合、摂食・嚥下(えんげ)障害や全身管理を必要とするような重篤な疾患を持つ人に歯科治療をすることも少なくありません。DEMCOPではそのような患者に安全な歯科医療を提供するための情報提供と実技指導を行っています」

 さらに、2025年をめどに地域包括ケアシステムの構築が進められている中、九州歯科大学では市内で教育連携協定を締結している複数の医科病院において、歯学科および口腔保健学科の学生が臨地実習という形で実習を行っている。

インタビューに答える西原理事長兼学長

インタビューに答える西原理事長兼学長

 ◇歯周病予防の検査キットを開発

 西原理事長兼学長は、九州歯科大学で6年間学んだ後に東京医科歯科大学大学院を経て、国立感染症研究所において歯周病研究者として13年間勤務した。研究のベースを北九州に移して、現在まで歯周病の早期発見・重症化予防を視野に入れた検査機器の開発・実用化を目指している。

 「歯周病は放置しておくと、歯周病菌が感染源となって歯の周囲の歯周組織が炎症反応によって破壊されます。歯周病の場合、治療が遅れて痛みを感じる頃には歯を支えている骨がほとんど破壊されてしまい、そういう状態になると抜歯寸前の状態になってしまいます」

 近年、歯周病について多くの研究成果が報告されているが、特に歯周病が心筋梗塞や糖尿病認知症などに関与していることが注目されている。そこで、西原理事長兼学長が考えたのが口腔内の歯周組織の病状を数値化する検査機器である。開発企業をはじめ、北九州市の歯科医師会などと共に、舌ぬぐい液を用いて歯周病菌の酵素活性を測定・評価する「歯周病リスク検査(アドチェック)」の開発に関わってきた。

 「長年にわたりこの事業は研究者である自分自身へのミッションとして取り組んできました。福岡県知事にも賛同していただき、福岡県の歯科保健事業にも取り入れられました。昨年は政府の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2022)に、いわゆる国民皆歯科健診が明記されたので、この機運に乗ってさらに歯周病診断機器へと発展できればと思っています」

 「歯科医療におけるさまざまな取り組みに携わることができ、今は歯科医学研究の道を選んで良かったと思っています。学生の中には医学部に行きたいという思いを引きずって在籍している学生もいます。そんな学生には私の過去の医師になりたかった経験を語って、歯科医学は生涯研究に値する学問であると話しています」(ジャーナリスト/美奈川由紀)

西原 達次(にしはら・たつじ) 1981年九州歯科大学歯学部卒、86年東京医科歯科大学大学院修了(歯周病学)。国立予防衛生研究所研究官、同研究所歯周病室長を経て99年九州歯科大学教授。2005年大学院歯学研究科長、06年理事・歯学部長、12年4月から現職。

【九州歯科大学 沿革】
1914年 九州歯科医学校創立
1921年 九州歯科医学専門学校に昇格
1944年 医学科を併設し、福岡県立医学歯学専門学校に改称
1947年 医学科を廃止し、福岡県立歯科医学専門学校に改称
1949年 新制九州歯科大学に昇格
1966年 大学院歯学研究科開設
2006年 公立大学法人設立
2010年 口腔保健学科創設

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