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同僚の幸せを喜べない悩みどうする?

 同僚の幸せを素直に喜べないという悩みを聞くことがあります。喜べない自分に嫌悪感を抱き、じくじたる思いを抱えながら日々を送っている人も結構いるようです。そんな場合、どう対処すればよいのでしょうか。

(文 海原純子)
仕事上のストレスがたまっていると、周囲の喜ばしい話にも屈折した思いを抱いてしまう可能性があります(イメージ)

仕事上のストレスがたまっていると、周囲の喜ばしい話にも屈折した思いを抱いてしまう可能性があります(イメージ)

 ◇しわ寄せに不満

 企業で新規立ち上げの案件をほぼ1人で担当してきた女性Aさん(30代)は、丸1年を費やしてきた企画の先行きがやっと見え、ほっとしていました。さらに、昨年配属された同年代の女性に業務の内容を一通り教え、これからは仕事にゆとりができて自分の時間が持てると思っていました。その矢先に当の同僚女性が妊娠し、産休に入ることになりました。

 おめでたいことだから喜ばなくてはいけないはずなのに、また自分一人に負担がかかると思うと何か理不尽だと感じ、手放しで喜べません。同時に、喜べない自分も嫌だと悩んでいるそうです。

 クリニックで看護師をしている女性Bさんは、40歳も近くなり不妊治療をしたいのですが、休みを取りづらくて内心焦っていました。そんな時に後輩の20代の看護師が妊娠して産休に入ることが分かり、複雑な心境だったといいます。自分の負担が増すのでさらに不妊治療を受けるゆとりがなくなると思い、素直に後輩の妊娠を喜べない気持ちになってしまったといいます。

 「同僚や後輩の幸せを喜べない自分がみじめ」という気持ちをどうすればいいのでしょうか?

 ◇日ごろ過剰適応していないか

 素直に喜べないのに無理に喜ぼうとするのは自分の感情にうそをつくことになります。人の幸せを喜べないのは自分が満たされていないというサインです。AさんやBさんに共通しているのは、普段かなり自らを犠牲にしながら仕事をしていることです。

 実際、Aさんに話を聞くと負担の多い案件を1人で担当しており、人員を増やしてほしいと思いながら強くは言えずに我慢し、時間外労働もかなり多かったそうです。それでも期待を裏切れないという思いで頑張っており、過剰適応状態で仕事を続けていたとみられます。Bさんの場合も、後輩たちに負担がかからないように自分がクリニックの雑用まで引き受けるようにしていたことが分かりました。

 自己犠牲的な働き方をし、自分の感情を抑えて過剰適応していると、心の中に不満がたまります。しかし、仕事をしている以上、そんな気持ちは表に出せないので、さらに我慢するという悪循環が起きます。そうした場合、周囲に幸せで満たされた人がいれば素直に喜べなくなるものです。

 人の幸せを一緒に喜べるようになるには、自分も幸せな気分でいる必要があります。心に鬱憤(うっぷん)がたまった状態だと、人の幸せを見たり聞いたりしてもうらやましくなるだけです。

 ◇自分への思いやりを

 AさんやBさんのように自己犠牲的に働いている人にはセルフコンパッションが不可欠です。セルフコンパッションとは、米国の教育心理学者クリスティーン・ネフが提唱した、自分への思いやりを大事にしようという考え方です。人をケアする仕事や子育て中の女性などは、他者や子どもを優先して自分のことを後回しにする傾向が強くなるものですが、自分に対してもきちんとケアしようというものです。

 AさんとBさんには、納得のいく働き方ができるように、上司などと相談して時間的なゆとりをつくることを勧めました。自分がほっとできる時間をつくったりしながら過剰適応状態を改善することが心のゆとりにつながると思います。

 人の幸せを喜べないのはストレスがたまっているサインです。自分の生活を見直してみることが大事と言えます。(了)

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