女性特有のがん、早期治療が要
~ガイドラインで正しい情報を~
患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン第3版
◇正しい知識伝えたい
病院でこれらのがんと告知されたら、または再発が判明したら、ほとんどの人が不安でつらい日々を過ごさなければならない。そんな状況の中、自分のがんはどういうものか、どんな治療があるのか知るために役立つのが、患者と家族のためのガイドライン(第3版)だ。
作成した日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会の委員長で、山形大学医学部産婦人科の永瀬智医師は「第2版発刊は16年。その後の7年間に出てきた新しい治療や、患者からよく聞かれた質問を取りまとめた」とした上で「患者とその家族の方に、正しい知識を間違いなく伝えたい」と語る。
現在のガイドラインでは、初期の子宮頸がん・体がんに対する腹腔(ふくくう)鏡手術やロボット手術の位置付けが、2版出版時と変わっている。「腹腔鏡手術が保険適用となり、子宮体がんではメインになってきた。ロボット手術の項目は3版で初めて設けられた」と永瀬医師。
標準治療が終了した患者が受けられる「がんパネル検査」も、この7年の間に登場した。がんに関わる多数の遺伝子を一度に調べ、その変異を明らかにするもので、新しい治療の可能性を見いだすとして期待される。ただ、課題もある。同医師は「治療方法の選択肢が少なく、治療まで結び付きづらい。標準治療が終わってからではなく、治療を始める初期段階で検査を行うようにすれば、最適な治療法を早めに示せる。状況も変わるのではないか」と指摘する。
◇患者の疑問に答える
ガイドライン作成に当たって心掛けたのは実用性だ。「本書は、外来でよく質問された事柄に加え、がん対策情報センターに届いたさまざまな問い合わせを盛り込んだ。患者さんが本当に疑問や不安に感じている内容をカバーしなくてはならない。専門用語もなるべく分かりやすく言い換えた」と永瀬医師は話す。
ガイドラインの編集について、永瀬智医師は「知りたい項目を読めば必要十分な情報が得られる構成を心掛けた」と振り返った
例えば予防接種。新型コロナウイルス感染症の流行もあり、外来での質問が多かったという。これには「インフルエンザも含め、がん治療中でも予防接種を受けることを薦めている」と永瀬医師。
HPVワクチンについても関心が高く、新項目として立てた。「2010年度に公費助成が始まり、2013年4月から定期接種となったが、一部の人に接種後生じた症状が影響し、積極的な推奨が控えられ、止まってしまった。現在はワクチンと症状との明確な関連は無いとされ、接種の機会はあらゆる形で提供されている」(永瀬医師)という。
その他、がん治療中の歯科治療や性生活など、患者の日常生活に即した、切実な疑問に答えている。
◇治療後も寄り添う
幅広く情報を網羅している本書の作成について、永瀬医師は「患者さんには、このガイドラインに記載してある標準治療を最初に受けてほしいというのが願い。有効性の確証が定かではない民間療法に時間やお金を使い、病気の進行を早めてしまうことだけは避けてほしい」と呼び掛ける。
加えて、患者とその家族に読んでほしいというのが、治療後のがんサバイバーのためのQ&A集だ。こちらも学会が編集した。同医師は「治療後の生活に関わる諸問題について、幅広く取り上げている。治療後もしっかりとフォローしていきたい」と語った。(柴崎裕加)
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(2024/03/07 05:00)
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