治療・予防

妊婦、高齢者、免疫不全者は要注意
~リステリア症(埼玉医科大学総合医療センター 岡秀昭教授)~

 リステリア症は、土の中などにいるリステリア・モノサイトゲネスという細菌に汚染された食品を介して伝染する感染症だ。健康な人は感染しても数日で自然治癒するが、妊婦や高齢者、免疫機能が低下した人は、重症化して命に関わるケースも。症状や予防法などを埼玉医科大学総合医療センター(埼玉県川越市)総合診療内科の岡秀昭教授に聞いた。

リステリア症予防のポイント

リステリア症予防のポイント

 ◇妊婦は流産、死産も

 リステリア症は食中毒の一種。リステリア菌が付いた食品を摂取してから発症までの潜伏期間の多くは1日~数週間程度で、発熱下痢吐き気嘔吐(おうと)、頭痛、関節痛や筋肉痛などの症状が表れる。

 他の細菌やウイルスによる食中毒と区別が難しく、多くは軽症で自然軽快する上、発症する割合も少ないため確定診断されること自体が珍しい。抗生物質による治療も行われないのが一般的だ。

 一方、「妊婦や高齢者、免疫機能の弱い人がかかると菌が脳や全身に回り、髄膜炎や菌血症など重い症状を引き起こす例があるので注意が必要です」。

 特にがんやエイズウイルス(HIV)感染症など免疫が低下する病気の人、ステロイドなど免疫を抑える薬を使う治療を受けている人は重症化しやすいため、発熱などがあれば早めの受診が肝心だ。リステリア菌による菌血症や髄膜炎は、血液中の菌を増殖させる血液培養検査や脳脊髄液を採取する検査で診断され、適切な抗生物質が投与される。

 「妊婦や新生児も要注意です。妊婦が感染するとリステリア菌が胎盤や胎児へ感染し、早産流産、死産、新生児感染など重い合併症を引き起こします」

 ◇冷蔵庫は過信禁物

 モッツァレラやカマンベールなどのナチュラルチーズや、生ハム、スモークサーモンといった肉や魚の加工品、水洗いしていない生野菜はリスクが高い食品だ。「リステリア菌は低温に強く、冷蔵庫で保管しても菌の増殖が進むため、冷蔵庫を過信しないようにしましょう」

 感染予防には、▽新鮮なうちに食べ切る▽開封後は賞味期限内でも速やかに消費する▽肉類と野菜は分けて保存▽野菜はよく洗って食べる▽手をよく洗う―点が重要だ。

 健康な人はあまり神経質になる必要はないが「妊婦や免疫機能が弱い方は、リステリア菌の汚染の可能性がある食品は避けることをお勧めします」。リステリア菌は食品を十分に加熱すれば感染を予防できるため、岡教授は「チーズはとろけるタイプを活用し、加熱してから食べるようにしましょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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