皮膚の傷を洗う、発熱あれば受診を
~急増の「人食いバクテリア」劇症型溶連菌感染症(ひまわり医院 伊藤大介院長)~
喉の炎症などを起こす溶連菌による極めて重い「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(劇症型溶連菌感染症)」が増えている。内科・皮膚科のひまわり医院(東京都江戸川区)の伊藤大介院長に症状や予防策について聞いた。
劇症型溶連菌の感染経路
◇喉や皮膚に存在
溶連菌は健康な人でも、5~10%の割合で喉や皮膚に保菌している。傷口に感染して皮膚がただれる「とびひ」や、飛沫(ひまつ)感染によって咽頭炎と呼ばれる「喉の風邪」を起こす細菌だ。菌が侵入した手や足の皮膚、その下の組織が壊死(えし)することもあるため、「人食いバクテリア」とも呼ばれる。
劇症型のほぼ半数は感染経路が不明だが、「細菌による体内の炎症に加え、細菌の毒素に対する反応で急激な症状が表れると考えられます」。
初めは、喉の痛み、発熱、手足の皮膚・筋肉の強い痛みと腫れが表れる。1~3日で急速に進行し、血圧の低下、呼吸困難などとともに肺や腎臓といった重要な臓器が機能不全に陥る。
◇致死率30%
国立感染症研究所によると、劇症型溶連菌感染症の2023年の患者数は941人で、現在の調査方法になった1999年以降で最多となった。2024年(3月3日現在)は422人と、前年同時期(151人)の3倍近いペースで拡大している。
「溶連菌による咽頭炎も増えており、それに伴って劇症型も増加しているのでしょう。コロナ禍で一般的な感染対策が徹底され、溶連菌感染症が少なかったことの揺り戻しかもしれません」
劇症型は中高年の発生が多く、致死率は30%程度に上る。23年7月以降、50歳未満の感染者・死亡者も増加しており、国立感染症研究所は1月に予防策の啓発、早期受診の推奨などを呼び掛けた。
伊藤院長は「一般的な飛沫感染と接触感染の予防策に加え、皮膚に傷が付いたらせっけんと流水で洗い、細菌の侵入を防ぐ」よう助言する。
また、「発熱と喉の強い痛み」「発熱と皮膚の急な赤み・激痛」といった症状があれば、すぐに医療機関を受診すること。特に皮膚病で傷や潰瘍がある人、糖尿病の人、最近手術を受けた人は注意が必要だという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/06/26 05:00)
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