劇症型溶血性レンサ球菌感染症〔げきしょうがたようけつせいれんさきゅうきんかんせんしょう〕 家庭の医学

 細菌を血液のまじった寒天平板上で培養すると、細菌の集落ができますが、その集落の周辺の血球がこわされ(溶血と呼びます)、透明になります。これがβ溶血です。
 本症は、β溶血を起こすグラム陽性レンサ球菌(顕微鏡では鎖のように連なった円形に見える球状の細菌)による重症感染症で、子どもから大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いことが特徴です。β溶血性レンサ球菌は、ランスフィールドという学者がウサギの血清を用いて分類しましたが、その分類のA群菌(時にB群、C群、G群菌)による感染症です。
 初期症状として四肢の痛み、腫脹、発熱、血圧低下などがみとめられ、その後急激に症状が進行して、発病後数十時間以内には軟部組織壊死(えし:壊死性筋膜炎・横紋筋壊死)、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS:Acute Respiratory Distress Syndrome)、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC:Disseminated Intravascular Coagulation)、多臓器不全(MOF:Multiple Organ Failure)をひき起こし、ショック状態から死に至ることも多い、きわめて重篤な疾患です。
 これらのβ溶血性レンサ球菌はペニシリンGに感受性が高く、有効なはずですが、一度発症すると、ペニシリンGを大量に投与しても、軟部組織壊死を防ぐことができません。外科的処置により病巣を?爬(そうは)したり、四肢を切断したりすることが必要になる場合も少なからずあります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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