遺伝子の異常が全身に影響
筋強直性ジストロフィーの遺伝と発症の仕組み 中森雅之山口大学教授に聞く②
DNAの異常は「CTG」という並びの塩基配列が、通常では37以下の繰り返し(リピート)なのに対し、50以上、場合によっては5000以上繰り返すというものです。
体内でたんぱく質が合成されるときには、一つ一つの細胞の核に収まっているDNAの暗号情報が、mRNA(メッセンジャーRNA)にまず写し取られます。そのmRNAは核から外に出て、細胞内のリボソームと呼ばれる“たんぱく質工場”で塩基配列に基づいてたんぱく質が合成されます。ところが、DNAの異常な「CTG」のリピートを読み取ったmRNAは、その長く伸びた異常な部分がヘアピン状に変形し、そこに正常なたんぱく質を合成するために必要な制御物質を絡め取ってしまいます。そうなると、制御物質のスプライシングという機能を阻害し、結果として、たんぱく質の正常な合成ができなくなってしまうのです。
ー子どもに遺伝しますか。
常染色体顕性(優性)遺伝といって、両親のいずれかが遺伝子の変化を持っている子どもには、2分の1の確率で病気が伝わる可能性があります。一般的に、世代が下るほど「CTG」のリピートが増え、それに伴い発症の早期化、症状の重篤化が進むとされています。
妊娠を考えていて、遺伝のことが気になる場合は、しっかり時間を取って説明をしてもらえる遺伝カウンセリングを受けることが大切です。臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーら専門家が対応しますので、主治医にご相談ください。
ご自身がすでに診断を受けている場合だけでなく、親がこの病気で、自分はまだ発症していないけれど、自分に遺伝しているかどうか知りたい、という場合や、子どもが診断された親の遺伝子の異常を把握し、リスクを認識しておきたい場合にも、相談に乗ってもらうことができます。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
中森教授
中森雅之(なかもり・まさゆき) 99年年大阪大学医学部卒業、同付属病院神経内科、00年大阪厚生年金病院神経内科、02年国立刀根山病院神経内科、03年大阪大学大学院医学系研究科博士課程、07年同課程修了(医学博士)。同年米国ロチェスター大学神経学、12年大阪大学医学研究科神経内科学、23年1月山口大学大学院医学系研究科臨床神経学教授。
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(2024/11/20 05:00)
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