【連載第3回】 話し合いへ、工夫凝らす=柔軟な制度、多様な解決―弁護士会医療ADR
◇「同席」「別席」スタイル
相互理解のための話し合いの席を、可能な限り穏やかに和やかに運営していくためには、あっせん人の適切な進行が不可欠だ。
話し合いのスタイルは、あっせん人と申立人と相手方が、同じテーブルに着いて話し合いをする「同席」スタイルと、あっせん人と申立人、あっせん人と相手方が個別に話し合いをする「別席」スタイルがある。
「同席」スタイルであれば、あっせん人は申立人の主張をかみ砕いて相手方に伝え、さらに相手方の主張についても同様の手続きを取る。それによって双方の当事者の紛争解決能力を引き出していく。「別席」スタイルであれば、相手方が同席しておらず、あっせん人に対して本音を打ち明けやすく、あっせん人は申立人の思いを傾聴し、当事者双方のこだわりやわだかまりを十分理解した上で、他方の当事者に伝え、話し合いによる解決の見通しを立てることができる。話し合いの進行状況などを見極めながら、「同席」と「別席」を使い分けていく。
◇2段階の進行モデルも
各地の弁護士会医療ADRは、話し合いをどう進めるかさまざまな工夫を凝らしている。
例えば東京三会では一度ADRの席に着いてしまうと、最終的にはお金を支払うことになるのではないかと考えてしまう医療機関側の懸念を払拭(ふっしょく)するため、ADR手続きの進行を二つの段階(ステップ)に整理している。「ステップ1」では当事者による話し合いや説明で、お互いの立場や思いを理解し合えるような場をつくる。その中で解決に向けた気持ちが高まり、双方がOKすれば「ステップ2」として、解決に向けた具体的な和解内容の調整を行うことになっている。
このような進行モデルをつくり、一般化することで、応諾率の向上とあっせん人が適切に話し合いを進行できるようにするための工夫と努力をしている。
(2017/07/31 13:09)