「うっかりドーピング」で選手生命危機=頼りは専門家の認定薬剤師
◇午前5時にピンポーン
ドーピング検査などについて語る中村真衣さん(左)と荻原次晴さん
「日を追うごとに日程は変わる。その都度、連絡しなければならない。ある日の午前5時、ドアのチャイムが『ピンポーン』と鳴った。ドアを開けてみると、ドーピング検査に来たJADAの人たちだった」。荻原さんがこう語ると、中村さんも「私も新潟県でトレーニング中、朝の7時か8時に抜き打ち検査を受けたことがある」と応じた。
尿の検査も、選手たちにとってはストレスを感じるものだ。採尿する時にJADAの関係者が選手と一緒にトイレに入り、ずっと見ている。中村さんは「2、3時間、尿が出ない選手もいる。尿の量が足りなければ、また出るまで待っていなければならない」と話した。それでも、アスリートたちが検査をいとわないのは、スポーツはフェアであるべきだという信念からだろう。
◇言い訳は通用しない
浅川氏は「ルールを度外視しても勝とうとする競技者はいる。残念ながら、性悪説に立たざるを得ない。クリーンな選手であるほど、アンチ・ドーピングがなぜ必要なのかを理解し、趣旨に賛同してくれる」と説明した上で、「記録を争うスポーツの日本選手権で優勝すれば、ドーピング検査が前提になる。それをパスすることが勝った証しだ」と言う。
ロシアのような例はひとまず置くとして、問題なのはこれから伸びようとする若い選手らのうっかりドーピングだ。荻原さんは「『うっかりしました。ごめんなさい』は通用しない。渡された風邪薬を飲んでドーピング検査で陽性になれば、『資格停止』とメディアに取り上げられ、スポーツ界から追放されることにもなりかねない」と警鐘を鳴らした。
(2017/12/17 16:00)