「うっかりドーピング」で選手生命危機=頼りは専門家の認定薬剤師
◇市販胃腸薬、風邪薬に禁止物質

日本薬剤師会副会長の石井甲一氏
日本薬剤師会副会長の石井甲一氏によると、公認スポーツファーマシスト認定制度でJADAに全面的に協力することになったのには経緯がある。03年に静岡県で開催された国体で、国体におけるドーピング検査が初めて導入された。「不注意によるうっかりミスで検査に引っ掛かる場合もある。どんな薬を飲んだらよいか、問い合わせに応じてほしい」。県体育協会の陽性に、県薬剤師会が応じる態勢を取ったことが、日本薬剤師会がアンチ・ドーピング活動に積極的に参画するきっかけになったという。
04年から毎年、日本薬剤師会と国体開催都道府県の医師会、日本体育協会アンチ・ドーピング部会が共同で「薬剤師のための アンチ・ドーピングガイドブック」を作成、開催都道府県を中心に無償で配布している。17年版を見ると、特に気を付けたい一般用医薬品や健康食品、サプリメントなどの項目がある。胃腸薬には禁止物質のヒゲナミンやストリキニーネが含まれているものがあるし、多くの総合感冒薬(いわゆる風邪薬)にもやはり禁止物質のエフェドリンやメチルエフェドリンなどが含まれているので、注意が必要だ。 2017年版「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」
医薬品に比べて規制が緩いサプリメントも危ない。国内外の多数のサプリメントが入手可能だが、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)はスポーツでのサプリメント使用を推奨していない。海外ではラベルに表示しないまま不正に興奮剤やステロイドなどを添加した物が多数流通しているので、製造基準などが不明な商品の使用は避けた方がよい。岩手の国体で自転車競技の選手が陽性となったのも、サプリメントだった。
◇20年オリ・パラで活躍へ
石井氏は「ドーピングの相談に応じることは新たな社会貢献の一つ。もっと薬剤師が国民の目に止まるようになる活動だ」と言う。スポーツファーマシストの資格を取得しても、それが報酬に直結するわけではない。「基本的にはボランティアで、自己研さんの一環と位置付けている」。20年の東京オリンピック・パラリンピックの期間中、選手村の診療所で勤務してもらえるスポーツファーマシストを都道府県の薬剤師会に問い合わせており、石井氏は「全くのボランティアだが、予想以上の協力者が見込めるのではないか」と期待する。(鈴木豊)
(2017/12/17 16:00)