特集

新薬開発で日本回避懸念
製薬各社、薬価改定に反発

 ◇ドラッグ・ラグは解消途上
10年間で承認申請品目も2倍以上に急増

 日本国内では2000年代まで、開発が遅れたり着手しなかったりして、欧米で治療に使われている医薬品が利用できない「ドラッグ・ラグ」が問題になっていた。新薬の審査期間が長かったほか、海外よりも2~6倍かかる開発時の臨床試験費用の高さがネックとなり、製薬各社が日本での開発を後回しにしていたことが原因だ。

 厚生労働省は事態打開に向け、迅速に新薬の審査ができる体制を整え、10年度には新薬創出加算制度を導入。こうした努力により欧米での共同臨床試験に日本も組み込まれ、日米欧の同時開発が進むなどして、ドラッグ・ラグは解消に向かっていた。米国研究製薬工業協会(PhRMA)の試算では、06~09年に平均42カ月だった日本のドラッグ・ラグは10~14年に15カ月に縮まり、15~19年にはさらに5カ月まで短縮するという。

 厚労省は「ドラッグ・ラグは解消してきている」などとして、新薬創出加算の縮小を決めたが、解消を促した加算制度の魅力がなくなれば、海外メーカーを中心に日本への投資マインドを冷え込ませることになる。国内製薬大手幹部は「すぐに影響は出ないが、欧米で発売された新薬が日本で出ない事態を数年後に再び目の当たりにするかもしれない」と警告。業界関係者からは「日本で新薬開発が遅れると、数千万円かけて海外で治療が受けられる高所得者のみの命が助かる」との声も上がっている。


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