医学生こーたのひよっ子クリニック

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第10回 心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患の診察では

「心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患の診察では、前回の診察からの心電図の変化を見ることが大切だよ」

これは循環器内科の実習中に先生が言っていた言葉である。心電図の波形というのは、ある程度形が決まっているが、人によって異なる。そのため心臓疾患の診察では、カルテに保存してある前回の診察時の心電図を見て、どのように変化しているのか、を考えることがとても重要だ。心電図に限らず、レントゲンやCTなどほとんどの検査で、過去のデータと比べることが大切であると、医学生は教え込まれる。

この類のことを言われるたびに、私は「カルテの内容を全国の病院で共有する必要性」を感じる。現在日本では一部の医療機関を除いて、各病院ごとにカルテを作成している。何らかの理由で他の病院のカルテを見る必要があるときには、連絡を取って許可をもらい、送ってもらう必要がある。

この日本のシステムで困るのは、救急車で患者が運ばれてきたときである。緊急を要するため、今までのカルテのデータをかかりつけ医からもらう時間はない。見比べる過去の検査データがないため、医師は教科書で覚えた検査の正常画像と今までの経験をもとに判断しなくてはならない。当然診察の精度は下がる。

医療システムにおいて先進国であるフィンランドでは、日本と違ってほとんどの医療機関の情報が共有されている。そのため医師は、初診の患者でも過去の通院歴、既往歴、薬剤処方を参照することができるのだ。救急の現場だけでなく、旅先で病気にかかった時や転居などで病院が変わった時などにも、この全国共有カルテは役立つであろう。

日本の医療は世界最高水準と言われているが、医療情報という面でフィンランドと比した時、果たして自信を持って最高水準だと言えるだろうか。個人情報やプライバシーの問題など超えなくてはならない問題はたくさんあるが、医療現場の人々が声を上げ、国がその声に耳を傾けて議論を進めるということが、今後世界に後れを取らないためにも必須であると私は考える。

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