Dr.純子のメディカルサロン

地球人としてできること 獣医師・三好康子さん

 ボルネオの森で
 三好康子さんは「動物が大好き」な明るい獣医師です。これまでガラパゴス(エクアドル)、ボツワナ、ウガンダ、ナミビア、ガーナ、ネパール、スリナム、スリランカなどを旅し、動物保護や外来種対策の視察などの経験を持つ、大変ユニークな先生です。

 動物との関わりについてお話を伺う機会があり、三好さんの動物に対する思いを知るようになり、ぜひ、もっと詳しく聞いてみたいと今回、ボルネオのボランティア活動から帰った先生に取材をお願いしました。

 オランウータンに魅せられて

 海原 三好さん、お疲れさまでした。今回のボルネオは何回目ですか。

 三好 改めて数えてみたら、8回目になっていました。今回はスタディーツアー(途上国などで視察やボランティア活動を行う旅行)に参加し、一度も伐採されたことのない本当の原生林を見てきました。

 海原 いつからボルネオでボランティアをするようになったのですか。きっかけなども教えてください。

 三好 オランウータンが大好きで、高校生の頃、動物園でボランティアをしていた時に出会った、不思議な魅力を持つオランウータン、ジプシーさんに魅せられたのだと思います。野生のオランウータンはボルネオ島とスマトラ島にしか住んでいません。オランウータンのためにできることは何かないかと思い、認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン(BCTJ)の会員になりました。

 2010年に初めてボルネオを訪れた時、何時間、車で走っても油ヤシのプランテーションが続く景色を見て、衝撃を受けました。一見、一面緑の森に見えるけれど、多様な生物が生息する熱帯雨林ではなく、単一の植物のみが整然と並ぶ人工的な畑であり、生き物の姿がほとんど見られません。これではオランウータンは住めません。これは尋常ではない、一体何が起こっているのだろう、何かしないと、と思いました。

 海原 ボルネオではどんな活動をするのですか。象を引っ張り上げるとか、聞いたことがありますが。

 現地でこそ実感できること

 三好 いえいえ、そのような実際の動物のレスキューは現地のチームが行います。ボランティア活動というより、現地の状況を学びに通っています。実際に現地を訪れてこそ実感できることがたくさんあります。今回は初めて原生林を歩きましたが、木の高さと太さに圧倒されました。

 「木の高さと太さに圧倒されました」(ボルネオで)
 エコツアーなどに参加すること自体、現地に雇用を生み、間接的に環境保全に役立つという面もあります。訪れる人が増えれば、熱帯雨林を破壊して利用するのではなく、保全しつつ観光資源として利用する手法がもっと広がっていくと思います。

 樹齢何百年の木でも、切り倒すのは一瞬ですが、元に戻すのは容易ではありません。それなら保全し、持続的に利用した方がどれほど価値があるか。答えは明らかです。実際にボルネオの森は、まだまだたくさんの生き物に出会えるので、とても魅力的な楽しい場所です。日本では見られない変わった生き物も次々に登場してくれます。ぜひ多くの方に訪れていただきたいのです。

 日本にいてもできる活動はあります。BCTJ会員としてわずかばかりですが寄付をすることで、分断された森と森をつなぐ土地を購入する資金になります。初めにお話したオランウータン、今は亡きジプシーさんですが、彼女の故郷ボルネオに「ジプシーの森」を造ろうという計画があります。興味のある方は、ぜひご参加ください。このような活動も、熱帯雨林の保護につながります。


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