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がん患者の運動機能保持
整形外科学会が問題提起

 長く日本人の死因の1位を占めているがんは、その発病箇所や進行の具合、腫瘍の性質などによって発病後の経過はさまざまだ。進行が緩やかな場合は、どれだけ日常生活での活動性が維持できるかが、患者の生活内容を大きく左右する。足や腰など運動器の機能障害である「ロコモティブシンドローム」(ロコモ)をめぐり運動機能保持に取り組んでいる日本整形外科学会は、がん患者を悩ますロコモを「がんロコモ」と名付け、支援に力を入れ始めた。
 以前から骨自体にできるがん(骨軟部腫瘍)は整形外科の領域だ。ただ、乳がんや肺がんなどで多発する骨転移=用語説明=については、神経への圧迫の軽減や腫瘍自体の縮小を期待して腫瘍除去の手術や患部への放射線照射はある程度一般化しているものの、整形外科医が関わることはさほど多くなかった。しかし、がんの治癒率や延命率が向上した結果、歩行や起居の可否は、患者の行動範囲、ひいては生活の質(QOL)を直接左右するようになっている。

 ◇積極的緩和治療に大きな役割

土屋弘行金沢大学教授
 骨軟部腫瘍への治療を長く手掛けてきた金沢大学医学部の土屋弘行教授(整形外科)は、現状の課題を指摘した上で「骨転移への手術を含めた整形外科的な治療は、QOLの向上や苦痛の減少、移動能力の向上など、積極的な緩和治療として大きな役割を果たすことができる」と強調している。
 土屋教授によると、骨転移が起きる確率が高いのは乳がんや前立腺がん、肺がんなどで、脊椎や骨盤、大腿(だいたい)骨や上腕骨など日常の動作に大きな影響を与える骨への転移が多い。転移が起きた場合は、腫瘍が骨を浸食することで骨折しやすくなったり、脊髄などを圧迫して痛みやまひを引き起こしたりすることが少なくない、という。

 対策としては、手術や放射線照射など転移腫瘍への直接的な治療と並行して、骨が耐えられる限界を越えないように慎重に立案されたメニューによるリハビリテーションの実施、「コルセット」などの装具などを使っての圧迫の軽減、注射や内服の痛み止めの投与―など幅広くある。より深刻な場合は、転移により弱くなった骨を補強するために金属棒を埋め込んだり、切除された部分を人工の骨や関節に切り替えたりする手術も選択肢になる。

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