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周囲の対応がカギ
子どもの吃音

 本人の意志に反して、言葉の一部の音を繰り返す、音を引き伸ばす、言葉が出にくいといった症状が表れる「吃音(きつおん)」。旧約聖書に登場するモーゼも吃音だったとされる。日本吃音・流暢(りゅうちょう)性障害学会(事務局・金沢市)の長澤泰子理事長は「周囲の大人が吃音について正しく理解し、適切に対応することが大切です」と話す。

 ▽男児に多い傾向

学校、保護者向けのパンフレットや教本、小冊子もある。問い合わせは全国言友会連絡協議会(http://zengenren.org/)へ。(長澤泰子日本吃音・流暢性障害学会理事長提供)

学校、保護者向けのパンフレットや教本、小冊子もある。問い合わせは全国言友会連絡協議会(http://zengenren.org/)へ。(長澤泰子日本吃音・流暢性障害学会理事長提供)

 吃音には「あ、あ、あのね」と最初の音を繰り返す「連発」、「ぼーーくがね」と言葉を伸ばしてしまう「伸発」、言おうとする言葉が出てこない「難発」の3種類がある。男の子に多く、言葉でコミュニケーションが取れるようになる2~5歳ごろに表れやすい。

 明確な原因は分かっていないが、長澤理事長は「親の育て方に問題があるとか、他の人の吃音をまねるからという説は否定されています。体質や環境要因などが複雑に絡んでいると思われます」と説明する。

 多くは連発から始まるが、難発から始まる子どももいる。症状は体調や日によって違い、個人差も大きい。言葉を出そうと足を踏み鳴らしたり、手を振ったりする「随伴症状」が出ることもあって、言葉をうまく出せないストレスや失敗することに恐れを感じるなど、心理的な問題を伴いやすい。「話すことを避けるようになると、引きこもりや不登校につながりかねません」と長澤理事長は懸念を示す。

 ▽普段通りに接して

 確立した治療法はないものの、70~80%は自然に消える。ただ、「ゆっくり」「もう一度」「慌てないで」といった言葉を子どもに投げ掛けるのは逆効果。むしろ周囲の大人は子どもに対して、ゆっくり、はっきり、間を取りながら話すことが大切だという。

 子どもが話そうとする内容に耳を傾け、普段通りに接することもポイントになる。長澤理事長は「家族を含め、幼稚園や保育園、小学校など、子どもが身を置く環境では大人は同じように接してほしい」と強調。そのために周囲の大人が吃音についての正しい情報と知識を身に付けるよう求めている。

 子どもの吃音については、言語聴覚士がいる病院や地域の発達支援センターなどで相談できる。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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