放置は危険、治療を
前十字靱帯断裂
膝の関節にある前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)は大きな負荷がかかると断裂することがある。スポーツ選手にとっては選手生命を左右しかねない大けがだ。稲波脊椎・関節病院(東京都品川区)の内山英司副院長は「前十字靱帯断裂を放置すると関節の他の部分にも影響が及ぶので、きちんと治療する必要があります」と強調する。
断裂すると激しい痛みと腫れが
▽強い痛みと腫れ
人間の膝部分の骨は、内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側側副靱帯、前十字靱帯、後十字(こうじゅうじ)靱帯という四つの靱帯でつながっている。前十字靱帯はジャンプして着地する時や急激に方向転換する際に関節を支えるなど、バスケットボールやサッカーなどのスポーツ動作に必要不可欠だ。断裂すると強い痛みとともに膝がずれ、ボキッという断裂音が出ることもある。
数分すると、痛みが少し引いて歩けそうに感じる。しかし、関節内に出血が起こり、次第に痛みと腫れが増し、動かしづらくなるという。数週間後には、腫れや痛みなどが治まり、多少の運動はできるようになる。
▽病院選びが重要
断裂した前十字靱帯が自然に治ることはない。同院では、患者自身の膝屈筋けんや膝蓋(しつがい)けんを移植する「前十字靱帯再建術」による治療を行っている。膝屈筋けんも膝蓋けんも一部を取っても影響は少ないという。手術後は、薬で痛みをコントロールしていく。
同院の治療の特徴は、手術翌日から歩く練習と膝の動きのリハビリを始め、手術後1週間前後で松葉づえなしで院内を歩行訓練して、10日ほどで退院することだ。内山副院長はその狙いを「こうした保護期間を短くすることで、心肺機能や膝機能の低下を防いで、確実な競技復帰につなげています」と説明する。
前十字靱帯再建術の手術法やリハビリのやり方は病院によって異なる。内山副院長は「スポーツに詳しい医師などの意見を参考にしながら、実績のある医療機関を選んでください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/01/16 06:00)