Dr.純子のメディカルサロン

パワハラ上司の共通点
~今年は職場の雰囲気を変えましょう~ 第27回

 昨年はパワハラが職場で大きな問題になった1年でした。「こんな言葉がパワハラになる」ということで、講習会などが行われるようになりましたが、一つ、見落としてはいけない問題があります。

 ◇パワハラの根底にあるもの

 昨年、ある企業で管理職を対象とした講習会をした時のことです。テーマはパワハラでした。会議室に入った時、まず目に付いたことがあります。それは50代くらいの男性が、机から椅子を少し後ろに引き、足を組んだまま、椅子の肘掛けから腕をだらりと下ろし、反り返るような姿勢で座っていたことです。

写真はイメージです

写真はイメージです

 「こんにちは」と私が会議室の全員に声を掛け、話を始めても、その男性はあいさつを返さず、硬い表情のままでした。こんな姿勢で話を聞かれるのはたまらないと思い、私は「講演を聞くということではなく、皆さんが会議でスタッフのプレゼンテーションを聞くというスタンスでお願いします」と話しました。

 しかし、その男性の態度にも表情にも、変化は見られませんでした。多分、その方はいつもこんな姿勢で部下の話を聞いているのだろうな。そして、何の問題もないと思っているのだろうな。そう思いましたが、実はそれが問題なのです。

 パワハラの根底にあるのは、言葉の問題だけではありません。パワハラは、上司と部下の信頼関係が不足していることや、部下を一人の人間として尊重する意識が上司に不足していることに起因しているといえます。

 反り返った姿勢で足を組み、あいさつを無視するのは、相手にコミュニケーションを拒否する態度と感じさせてしまいます。それが普段からの癖だとすれば、改善しないと、「コミュニケーションを取ろう」という姿勢からは程遠くなります。言葉だけでなく、話をしたり、聞いたりする時の表情や態度は、相手とのコミュニケーションで重要な役割を果たしていることを忘れると、リスクを大きくします。

 ◇聴く姿勢がない上司の場合

 製造業企業に勤めるAさんは、20代の入社2年目の女性です。頑張って仕事をしてきましたが、まだ不慣れ。そのため、仕事の量が急に増えた時、失敗が重なり、上司に何度か、きつく注意され、落ち込むことが増えました。失敗を注意する時の上司の声が急に大きくなり、失敗してはいけないと思って緊張するため、また失敗をしてしまうとのことです。

 この上司に質問すると、「自分で考えれば」と言われ、質問できずに失敗すると怒られる、という繰り返しが続きました。上司にあいさつをしても、顔も見てくれず、不安になっていました。朝になると身体がだるく、会社に行くのが怖くなり、睡眠の質も低下して受診。適応障害と診断され、少し休んだ方がいいと主治医から言われたそうです。

 そのことをこの上司に相談したところ、Aさんの顔も見ず、「人事に診断書を持っていって、休めば」と一言だけ。その態度でAさんはさらに落ち込んでしまいました。

 上司は「必要な注意をしたに過ぎない」と言うかもしれません。しかし、上司の態度や姿勢でAさんは気持ちが落ち込んでしまったわけです。部下とのコミュニケーションを悪化させ、仕事のパフォーマンスを低下させれば、企業にとっても損失です。

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