ストレスで悪化する過敏性腸症候群
腹痛への不安で生活に支障も
ストレス社会特有の現代病ともいわれる過敏性腸症候群。通勤中に電車の中で急におなかが痛くなり、トイレを求めて何度も途中下車せざるを得なくなるなど、生活の質を大きく低下させる病気だ。川崎幸クリニック(川崎市)心療内科の天野雄一医師は「患者さんはいつ襲ってくるか分からない腹痛や下痢への不安感が強く、日常生活に支障を来す人もいます」と話す。その原因や対処法について聞いた。
過敏性腸症候群の分類
▽日本人の1割が患う疾患
過敏性腸症候群は、腸に炎症やポリープといった原因となる疾患がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感を伴う下痢、便秘などの便通異常が繰り返し起こる病気だ。ストレスを起因とする自律神経のバランスの乱れによって、腸のぜん動運動に異常を来して悪化する。
天野医師は「過敏性腸症候群の患者さんは、普段よりも痛みを強く感じる知覚過敏の状態になるのが特徴です」と話す。腸と脳は密接な関係があり、ストレスを感じると脳から腸にその情報が伝わって腸の運動が活発になり、腹痛や腹部の不快感につながる。
それがさらなるストレスとなり、痛みを強く感じるという悪循環に陥る。「患者さんは若い世代に多い傾向があります。男性では下痢型、女性では便秘型が多く見られ、両方を繰り返す混合型、分類不能型の四つのタイプがあります。日本人の10人に1人が患っており、決してまれな病気ではありません」と天野医師。
▽ストレスの軽減で症状が改善
治療法としては、下痢、便秘、腹痛などの症状に合わせて薬剤を使用する。天野医師は「薬の選択肢が増え、以前よりも症状をコントロールしやすくなっています。症状の改善が良い循環を生み、劇的に症状が治まる人もいます」と説明する。
香辛料の取り過ぎや喫煙、睡眠不足などの生活習慣の見直しで良くなる場合もある。最近の研究では、腸内細菌も病態に関わることが分かってきており、乳酸菌やビフィズス菌などを含む食品を摂取したり、発酵食品の摂取を減らしたりすることで症状が改善される場合があり、食生活の個別対応が大切である。
ただ、ストレス過多の状況では治療効果が得られない場合が多い。「患者さんが自分の置かれた状況を客観的に捉えることが重要で、適切なストレスのマネジメントにより症状が改善するケースもあります」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/02/28 06:00)