早期治療で聴力の回復を
難病の突発性難聴
突発性難聴は、突然片方の耳が聞こえにくくなる原因不明の病気である。速やかな治療が回復のカギを握る。JCHO東京新宿メディカルセンター(東京都新宿区)耳鼻咽喉科の石井正則診療部長は「発症後48時間以内、遅くとも2週間以内に治療することが、聴力回復のためには重要です」と話す。
突発性難聴の主な症状
▽放置せず、すぐ受診を
突発性難聴は、内耳にある神経に問題が生じて発症する。特徴は、突然聴力が著しく低下すること、片耳だけに起こること、1回発症したら再発はしないということだ。時間をかけて徐々に耳が聞こえなくなるケースとは異なり、患者はある日突然、いつもの聞こえ方と違うとはっきり自覚できる。
石井診療部長は「急に聴力の異常を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科で治療を受けてください。突発性難聴は、早期に発見し、一刻も早く治療を始めることに尽きます」と話す。発症から2週間以上経過してしまうと、治療に長期間を要したり、完全には聴力が回復しなかったりするリスクが高まる。
▽ストレス避け、十分な睡眠を
突発性難聴は聴力低下のほかに、耳鳴り、耳がふさがったような感じがする耳閉塞(へいそく)、めまいなどを伴う場合もある。発症の原因としては、内耳の血流障害が有力視されているが、それ以外にウイルス感染の可能性もあり、明確な結論は出ていない。
石井診療部長は「患者さんには肉体的・精神的ストレスを抱えている人が多いという印象があります。歌手やスポーツ選手など、過度の緊張を抱えながら人前に立つ職業の人にも多く見られます。10~20代の若い人も増加傾向にありますが、仕事や親の介護などで重責を担う50~60代に最も多い病気です」と話す。
根本的治療法はなく、安静を保ち、薬物療法で症状の改善を目指す。薬物療法としては、ステロイドの点滴や内服を行ったりして代謝を上げ、内耳の血流を改善するため、血管拡張薬や神経へ作用するビタミン薬などを用いる。重症になると入院治療が必要になるケースもあるという。薬物療法と並行して、過度の緊張や興奮、ストレスを避けたり、睡眠時間を十分確保したりすることがとても大切だ。
石井診療部長は「患者さんの3分の1は完治し、3分の1は聴力がある程度改善するが、残りの3分の1は回復が難しい」とした上で、「ストレスや緊張が強すぎる生活を見直すことが一番大切です」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/01 06:00)