一流に学ぶ 「美と健康」説くスポーツドクター―中村格子氏

(第7回)
JOCの本部ドクターとして
スポーツ選手の主治医に

 東京に戻った中村格子氏が就職先に選んだのは、国立スポーツ科学センター。スピードスケート日本代表チームのドクターの仕事が評価されての採用だった。ここでは日本オリンピック委員会(JOC)日本選手団の本部ドクターとして、あらゆる種目が診療の対象となった。

 「午前中は試合に派遣される選手団の健康チェックやドーピングの検査。午後は選手を診療したり、担当競技の体育館に足を運んで、選手たちの体の使い方や競技環境をチェックしたりしていました」

 日本を代表する選手たちのけがを防ぎ、選手たちがベストなパフォーマンスを発揮できるよう、できることは何でもやった。試合前のスケート選手が気道を傷めないよう、加湿用のネブライザー(吸入器)を用意し、飛行機やホテル、リンクなどあらゆる環境の温度や湿度を測って、必要に応じて使ってもらった。ビーチバレーやトライアスロンといったビーチスポーツの国際大会に帯同した時には、熱い砂でやけどをしないように、コートの砂の温度をこまめに調査し、氷や薬の準備をして足の裏を冷やしたりしたこともあった。

 「女性アスリートの問題は男性医師には分からないこともあるから」と、新体操のチームドクターも任された。中村氏にとって、見た目の美しさに気を配る審美系スポーツに関わるのは初めての経験だった。

 「それまでタイムや得点を争う競技を中心に見てきて、人が点数を付けるスポーツはあまり興味がなかったんです。もともと男っぽいところがあって、評価がクリアなものの方が好きでした。でも、新体操の選手を診るようになってから、体の使い方を細かく見る必要が出てきて、整形外科医として面白さを感じるようになりました」

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