一流に学ぶ 「美と健康」説くスポーツドクター―中村格子氏

(第7回)
JOCの本部ドクターとして
スポーツ選手の主治医に


 ◇新体操選手の疲労骨折を防ぐには

 日本代表クラスの新体操選手の理想的な体形は、身長が165~170センチ、体重48~50キロ。手足が長く、筋肉もしっかり付いていながら、細い体を維持しなければならない。ところが、選手の多くが15~16歳で、女性ホルモンの分泌が盛んになり、太りやすい時期でもある。

   

2012年に中国・海陽で開かれた第3回アジアビーチゲームズには日本代表選手団の医師として帯同。右から2人目が中村格子氏、同4人目がビーチサッカーのラモス瑠偉監督
 「当時は間違ったダイエットが本当に多かったですね。食べておなかが出るのを嫌って、食べないで我慢したり、チョコレートのようにカロリーが高くて小さなものばかり食べていたり。食事制限をすると、いつも飢餓状態になるので、かえって体脂肪率が上がって筋肉が落ちる。努力しているのに太ってしまう子が多かったんです」

 骨折が多いことも問題になっていた。特に新体操選手に多かった疲労骨折の原因を探るため、中村氏は血液検査で骨代謝に関係するホルモンや女性ホルモンの数値も測定するなど、さまざまな角度から検討した。

 「痩せていて月経異常があると、産婦人科では女性ホルモンの低下による骨粗しょう症が原因だといって、ホルモン補充療法を勧められることがよくあります。でも、私の調査では、トレーニングの強度や時間、フロアの硬さ、筋力や関節の使い方、栄養状態、疲労回復に必要な休養が十分かどうかなど、さまざまな要素が関係していることが分かりました」

 トップアスリートは少々のけがで休養を取ることが難しい。だからこそ、予防が重要なのだ。予防に重点を置いてさまざまな角度から対策を考える経験を積み重ねたことが、その後の中村氏の活動に大きく影響することになる。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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◇中村格子氏プロフィルなど


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